5000億ドル債務爆弾」はいつ炸裂するか?

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「5000億ドル債務爆弾」はいつ炸裂するか?

中国経済はトランプの顔色次第。日本にも影響する2つのシナリオ

中国発行のドル建て債務、5000億ドルを突破

国際決済銀行(BIS)によると、中国で発行されたドル建て債務は、足元で5000億ドルを超えました。人民元建ての債務がGDPの3倍もあるとされるのに比べると小さな数字に見えますが、これが中国には「爆弾」となる可能性があり、ひいてはFRBの今後の金融政策にも影響を及ぼす可能性があります。

5000億ドル強のドル建て債務というと、2008年~2009年の危機時の20倍、2015年9月の1.5倍となります。2015年9月と言えば、米国でFRBが利上げに出ると見られていたのが、12月に先送りされた時期ですが、FRBが利上げを先送りした原因として、中国の金融市場の不安定があげられていました。

つまり、中国が3000億ドルを優に超えるドル建て債務を抱える中でFRBが利上げに出れば、ドル金利の上昇とドル高が中国には大きな借り換えコストの負担となり、経済金融を混乱に陥れる、との不安がありました。実際、その夏には人民元、中国株の急落が世界に不安の波紋を広げていました。

トランプとの「密約」頼みの中国経済

今日の中国市場は、為替も株式市場も政府の強力なコントロールの下で安定を見せ、そのおかげでFRBも利上げを継続し、資産の縮小にも踏み切ろうとしています。

しかし、中国でのドル建て債務は、15年秋よりも5割も多くなり、新興国で発行されたドル建て債務の3分の1を占めています。しかも、中国ではそのうち1000億ドル余が年内に償還を迎えます。

市場が不安定になれば、この5000億ドル強のドル建て債務は大きな爆弾となりうるのですが、中国政府はこのところ人民元を押し上げ、1ドル6.7元台に誘導しています。一頃は1ドル7元を脅かすほど、人民元不安が高じていましたが、国内金利を高めに誘導し、資本規制を強化することで人民元の先安観はかなり後退しました。

そして最大の不安定要素であった米国政府が、トランプ大統領の下で少なくとも秋の共産党大会までは習近平主席の立場が悪くならないよう、市場の混乱回避、政治的な対立回避に回っています。この中国支援の下、中国金融市場も安定を維持し、この間にFRBは利上げを進めることができました。

このシナリオであれば、秋の共産党大会までは市場も安定が続きますが、共産党大会が習近平体制の強化で終わると、そのあとは米中冷戦の開始となり、米中関係が再び悪化すると考えられていました。従って、共産党大会が終わる前の安定期に、ドル建て債務の償還が進めば、大きな混乱は避けられます。

米中関係の悪化が招く日本株の大幅調整。想定される2つのシナリオ
再び動き始めた米中間交渉

しかし、米中間で交わされた「100日計画」が、少なくとも米国が納得するような成果を見ず、北朝鮮も核ミサイル開発を進めています。このため、米国側が中国に対して不満を持ち、ウイルバー・ロス商務長官はあからさまに米中間の貿易不均衡に対する不満を公然と表明するようになり、早急に「公平、公正で相互的な関係」を構築するよう求めるようになりました。

つまり、米中間の交渉時計は、秋まで止まっているはずが、早くも動き始めた感があります。つまり、中国が持つ5000億ドル強のドル建て債務が改めて「爆弾」になりうる状況となりつつあります。そこから考えられるシナリオは次の2通りとなります。どちらにしても円相場や日本株にも影響が及びます。

日本市場への影響必至。想定される2シナリオ

1つは米国の対中強硬論が前倒しされるケースです。習主席が共産党大会を乗り切れると見れば、前倒しで中国叩きを再開する可能性があり、その場合は中国の市場開放、資本規制の緩和、金融自由化を求めて中国を揺さぶる可能性があります。

これは中国に大きな負担となりますが、中国がこれに利上げで対応すれば、金融引き締めも経済を圧迫します。

そこでは中国、新興国向けの配慮は後回しになり、15年夏のような新興国の通貨安、株安が再現される可能性があります。その引き金となりうるのが、丹東銀行以外にも、例えば4大国有銀行の1つにも、米国のドル決済市場から排除するケースで、ドルがとれななくなった銀行中心に市場は大混乱となります。

その場合はリスク・オフとなり、円高が加速し、日本株が大きな調整を見る可能性があります。

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