「野党とマスコミの責任」

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加計問題で「行政が歪められた」証拠を示すのは野党・マスコミの責任だ

国会では、24日(月)と25日(火)に閉会中審査が行われ、加計学園問題などが議論された。これに対して、一部メディアでは「加計疑惑、証拠なき否定」と報じられている。これはいわゆる「悪魔の証明」である。つまり、ないことの証明は困難であるので、法のことわざとして、「否定する者には、挙証責任はない」がある。

加計学園問題では、一部メディアが、安倍首相と加計学園理事長との個人的な関係を根拠として「総理の意向」が働いたはずとの主張をした。この場合、証拠を提示する挙証責任は、存在を主張する一部メディア側にある。それを否定する側に証拠を求めてはいけない。

文科省内メモに証拠能力はない

特区会議議事録など見れば真実わかる

本コラムでは、これまで「文科省内メモ」は証拠能力がないこと、文科省の内閣府で合意済みで証拠能力のある公表された特区会議議事録から見れば、文科省メモや前川前文科事務次官の発言は誤りが多いことを指摘した。

その後、当事者である国家戦略特区会議委員の記者会見、加戸・前愛媛県知事の国会証言、京都産業大や京都府知事の記者会見、獣医師会会長の発言などで、筆者の言ってきたことが正しかったことがわかっていただけたと思う。

これらのうち一部は、以下のサイトで確認できる。

首相と加計理事長の関係を根拠にしただけの不毛な論争

24日の国会閉会中審査における小野寺五典議員の質問は、これまでの事実の積み重ねを質問して、よく整理されたものだった。

つまり、安倍首相が加計学園理事長と個人的な関係があっても、それで行政が歪められたことはないことを証明しているといえる。

本来、こうした「ないこと」の証明を行うのは困難である。このため、「否定する者には、挙証責任はない」のだから、追求する側が、「行政が歪められた」ことを証明するのが、本来の議論である。

筆者は、国会においても、こうした議論の筋を堂々と主張すればいいと思っている。

ただし、今回の閉会中審査では、追求する野党は、安倍首相が加計学園理事長と何回食事した等を指摘し、あとは依頼があったはずという推論だけで、「行政が歪められた」はずという論法である。

そして、それへの説明がなされていないと主張し、「行政が歪められた」ことが「ないこと」の挙証責任を、否定する者に求めてしまっている。これでは、不毛な論争にしかならない。

もっとも、野党でも、問題の本質に迫る質問もあった。25日の浅田均議員の質問である。

冒頭の「文科省告示」(平成15年3月31日文部科学省告示第45号)が、いかに国民の権利を阻害しているかを政府に問いただして、告示の撤廃を主張している。

その中で、安倍首相から、告示の存続については、規制官庁が説明しなければいけないという答弁を引き出している。つまり、筆者が本コラムに書いてきたように、文科省告示の存続については文科省側に挙証責任があるとしたわけだ。

告示「存続」いうなら文科省に挙証責任

文科省告示こそが岩盤規制「存続」いうなら文科省に挙証責任

この文科省告示こそが、文科省が獣医学部の申請を一切認めないとする同省の方針であり、いわゆる岩盤規制である。こうした規制に基づき50年以上も獣医学部の新設がなかった。

そこで、国家戦略特区の課題として、内閣府と文科省の間で文科省告示の適否が議論された。交渉の結果として出てきたのが「石破4条件」だった。

筆者の聞くところでは、この文言案は文科省から出されたようだ。文科省告示から「石破4条件」が出てきたのだから、、「石破4条件」も文科省側に挙証責任があるはずだ。

なお、「石破4条件」は、獣医学部新設に関して、(1)新たな分野のニーズがある、(2)既存の大学で対応できない、(3)教授陣・施設が充実している、(4)獣医師の需給バランスに悪影響を与えない――という内容で、2016年3月までに検討するとされている。

これが作られた経緯は、18日付産経新聞「加計学園 行政は歪められたのか(上)」に詳しい。

それによれば、15年9月9日、石破氏は、衆院議員会館の自室で日本獣医師政治連盟委員長の北村直人氏と、日本獣医師会会長の蔵内勇夫氏に対して、「学部の新設条件は大変苦慮しましたが、練りに練って、誰がどのような形でも現実的には参入は困難という文言にしました」と語ったという。 

これが事実であれば、「石破4条件」は獣医師会の政界工作の成果だといえる。

いずれにしても、25日に安倍首相も認めたように、「石破4条件」の挙証責任は文科省にある。つまり、現状について、「石破4条件」を満たしていないことを文科省が説明できないのであれば、「文科省告示」は撤廃または改正せざるを得ないというわけだ。

現実には2016年3月までに文科省は説明できず、2017年1月に文科省告示の特例が作られた。

「1校認可」となれば認可申請は先着順が基本

別の論点として、なぜ獣医学部の新設が「1校限り」かという問題もある。

これは、前回のコラムに書いたように、基本的には先着順である、なにしろ文科省による設置認可は別にあり、今回、特区で行ったのは、単に認可申請できるだけだからだ。 しかも、その手続きも、当事者であった京産大が言っているようにまったく公正だ。

いずれにしても、文科省告示が今回の問題の出発点であったが、文科省が挙証責任を持っていないという主張こそ最大の問題である。

その挙証責任の所在さえわかっていれば、前川氏の記者会見の根拠がすべて薄弱になる。この意味で、筆者は前川記者会見の問題点として、「石破4条件」の挙証責任の問題を取り上げてきた。

「1校認可」の特例を来年以降どうするのか

この問題を深めるために、資料を探していたら、興味深いものに出合った。

国会閉会中審査の直前だったが、Twitterでアップしたところ、多くの反響があった。

それは、前川氏が課長時代の2005年7月のことであるが、当時の規制改革会議での議事録だ。

この評価は人それぞれかもしれないが、是非、読んでもらいたい。

前川氏は、当時から規制はするがその挙証責任(説明責任)はないという立場だったわけだ。当時、筆者は内閣府で諮問会議特命担当参事官であり、竹中大臣の補佐をしていた。ネットにこの議事録をアップしたら、その関係で当時の関係者からいろいろな情報が筆者のところに寄せられてきた。

前川氏はその当時のことで、役人として「非常識な行動」が指摘されたが、今でもそれは変わってない。

しかも当時も、規制改革に反対する文科省から週刊誌に規制改革委員の情報がリークされたということになり、内閣府と文科省の間で問題にもなったような記憶もある。これは今と酷似していて、今回も同じことが繰り返されている。

加計学園問題は、文科省が認可申請を受け付けないという告示の特例を設けて、申請ができるとしただけだ。

文科省の許可権限は侵害しておらず、この8月にも新学部設置の認可作業は文科省で行われる。これのどこが「行政が歪められた」のだろうか。

単に、申請を受けつけないという「歪められた行政」が正されたという程度の話だ。

しかも、今年1月の申請ができるという特例は、2018年度だけのものだ。来年1月、2019年度以降の特例を作るかどうか、これが見物である。

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