「カタール問題」

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カタール断交、背景にサウジ宮廷革命

カタールといえば、ドバイやUAEと並びリゾート、レジャー、貿易、金融といった中東を代表する先進地域という印象である。リビア、シリア、イラクといった世界有数の騒乱地帯の多い中東で数少ない安全地帯でもある。

しかし、いまやカタールは中東のジハードを支援してきたとして6月5日にサウジ、UAE,バーレーンなどの湾岸諸国並びにエジプトから外交断絶を突きつけられた。

6月5日に発表された4か国(サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプト)の国交断絶ならびに付随的にカタールとの陸海空の往来を途絶する、カタールの航空機、船舶の自国域内通過を禁止する、大使の国内退去ならびに在住カタール人の退去の措置も発表された。

国交断絶を宣言すると同時にサウジなど湾岸諸国はカタールとの往来禁止、カタール航空機などの自国域内通過禁止、滞在カタール人の国外退去、カタールのアルジャジーラ放送局閉鎖などの13項目を突きつけた。

なぜ湾岸諸国やエジプトは国交断絶という強攻策に出たのであろうか。カタールがイランに接近しすぎたことやムスリム同胞団を支援するなどの動きが改まらないことがサウジやエジプトの怒りを買ったことが最大の要因だ。

振り返ってみると、2012年、エジプトでムスリム同胞団出身のムルシィ大統領が政権の座につくと、カタールはエジプトへの金銭的支援(75億ドル)などで肩入れをしてきた。13年7月に同政権がクーデターで転覆された後も中東地域のムスリム同胞団支援の姿勢を変えず、イランとのガス田共同開発など宥和的スタンスを取り続けた。

このため、14年3月にサウジ、UAE,バーレーンの三か国は駐カタール大使を召還した。有名な放送局アルジャジーラがかつては中立的な報道をしてきたが、「アラブの春」を契機にサウジなどからみれば偏向していると見られたのも大きい。

カタールは人口220万人との小国家ではあるが、天然ガスの輸出では世界一である。またソブリン・ウエルス・ファンドとして名高いカタール投資庁は1兆円近い総資産を有する世界第2の規模を誇る。フォルクス・ワーゲンやバークレイズ銀行の大株主である。さらに2022年にはサッカーのワールドカップを開催することでも知られている。

今回の国交断交にはサウジの宮廷革命も影響している。サルマン国王の実子であり、経済、外交、国防で実験を握るムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(MbS)が6月21日皇太子に任命された。ナイーフ皇太子は突如、解任されるという政変であり、宮中革命ともいえよう。

ナイーフ皇太子は軟禁中とも伝えられる。MbSは、石油依存を脱する「ビジョン2030」の策定、アラムコの新規株式上場等を主導してきた。外交面でもトランプ大統領と真っ先に会談し、主導権を有している。イエメンへの軍事介入などや対イラン問題でも強気を通している。今回のカタールとの国交断交も主導してきた、と伝えられる。

各国の反応を見ると、イラン、トルコは今回の一方的な国交断交を強く非難するとともにカタールへの食糧支援を表明している。一方、米国のトランプ大統領がツイッターで国交断絶を支持すると発言した。

しかし、カタールには1万人を超す米軍が配備されており、イスラム国(IS)掃討の重要拠点である。このトランプのツイッターのコメントはあとで削除され、一転して問題解決に向けてティラーソン国務長官を仲介役に充てている。

目下のところ、今後の展開については、カタール側はサウジらの主張を一切認めていない。クウェートや米国の仲介も今のところ大きな進展は見受けられない。たしかに、専門家の間ではカタールと湾岸諸国が決定的な衝突に至るとみるむきはない。

どちらかといえば、株価も急落、CDSスプレッドも急拡大する中で、長期債格付けもが引き下げられるなど、国交断交のマイナス面が大きいカタールサイドの妥協に至るシナリオが予想されよう。

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