「避難ごうごう、最低な男」

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前川氏は、見えない何かに突き動かされているのか

前川喜平前文科事務次官の“反乱”が収まらない。安倍首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐり、政権批判の発信を続けているのだ。背景に感じる「恨み」と「名誉回復」。霞が関の住人は、前川氏の言動をどう見ているのか。元通産官僚である評論家の八幡和郎氏が緊急寄稿した。
 

「元事務次官というエリート官僚が、安倍首相に捨て身の反逆」
「霞が関も安倍官邸の横暴に立ち上がる」
新聞や週刊誌で最近、こういった見出しを見かける。それなら、霞が関の官僚たちはひそかに大喝采のはずだが、OBまで含めて、前川氏に対しては、非難ごうごうだ。

大富豪で、約8000万円の退職金はもらったが、不祥事での引責辞任で名誉は地に落ちた前川氏に失うものなどない。むしろ今回、「正義の味方」として振る舞うことは、一発逆転狙いの名誉挽回策といえる。

前川氏の言い分が事実無根とはいわない。「内部のメモ」としてはあったのかもしれない。だが、内容は最低限、著しい誇張だ。上司(官邸上層部)から希望をほのめかされても、あんな直接的な言葉で相手方に伝えるような部下(官僚)などいるはずない。

守旧派の抵抗を排しての獣医学部新設は十数年前から構想され、民主党政権で大きく前進し、安倍政権が国家戦略特区制度を創設して岩盤規制に穴を開ける機が熟した。地域バランスから「四国でも戦略特区を1つ」というのも合理的判断だ。

安倍政権も好ましいと考え、プッシュしただろうが、政官のせめぎ合いの中での常識の範囲内だ。ただ、文科省は「政治の圧力がゆえ」としたかったのかもしれない。

もし、官邸の非常識な圧力があれば、前川氏は辞表を懐に抵抗することも、抗議の辞職もできた。中曽根弘文元文相の義兄の立場(=実妹が中曽根氏に嫁ぐ)は強いし、それで退職金が減るわけでもなかった。

さらに、和泉洋人首相補佐官から「総理は言えないから、私が代わりに言う」との趣旨の発言があったとも明らかにしたが、前川氏と和泉氏には「浅からぬ因縁」がある。

東京五輪を見据えた新国立競技場問題をめぐり、和泉氏は、決断を下せない文科省と外郭団体から権限を取り上げて、問題を解決したのだ。前川発言を解釈する場合、これは斟酌(しんしゃく)すべきだ。

一般に行政の決定で、大きな原則が守られるなら、若干の政治的配慮は政治家の責任の範囲内だと思う。度が過ぎたらいけないが、政治家としての関与を常識の範囲内でしたことを、極悪非道がごとく言うのはどうかと、「森友学園」問題のときも今回も思った。

ただし、一般論として言うなら、欧米諸国なら客観的分析をして長所・短所をはっきりさせて、最後は政治の決断として決める。

日本では、結論を忖度(そんたく)だらけの曖昧なやりとりで決めて、基準や数字はそれに合わせることが多い。こういうやり方は、変えた方がいい。

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