「外国コイン」

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外国コインは日本生まれ 国際入札制し相次ぎ受注

外国貨幣も「メード・イン・ジャパン」−。500円玉など6種類の硬貨を製造する独立行政法人造幣局(大阪市北区)が、外国貨幣の受注・製造に力を入れている。2007年からの9年間でバングラデシュなど10カ国の計約5億1400万枚を手掛けた。

近年、電子マネーの普及などで国内貨幣の製造量が低迷する中、「設備の無駄を解消し、技術力を維持する」(同局広報室)ための苦肉の策が、日本の技術力への国際評価にもつながっている。

同局によると、07年の日本ニュージーランド友好記念1ニュージーランドドル銀貨(当時、円換算で80〜90円)製造を皮切りに、13年にバングラデシュ2タカ貨幣(同2円)、16年にはアラブ首長国連邦の100ディルハム銀貨(同3100円)など、記念貨幣や流通貨幣など計12種類を受注。同局が外国貨幣を生産するのは、大正−昭和初期に製造したロシアやタイなどの貨幣以来という。

受注には、英仏やドイツ、オランダなどがひしめく国際入札で競り落とさなければならない。もともと植民地などを抱えていた欧米諸国は、外国貨幣の製造歴も長く、入札のノウハウにもたけており「強力なライバル」(同局)と言う。

日本の“売り”は、独自の偽造防止策をはじめとする高い技術水準。ところが近年、その技術力や設備の維持に影を落とすのが、国内貨幣製造量の大幅な落ち込みだ。

同局によると、国内貨幣の製造枚数は1974年の約56億1千万枚をピークに、2016年にはその5分の1以下にまで減少。背景には、乗車券としても使えるJR西日本の「ICOCA(イコカ)」や、セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco(ナナコ)」など、釣り銭がいらない電子マネーの利用が増えた影響がある。

そこで財務省は12年から、貨幣の製造設備を持たないアジアや中近東の新興国を中心に、貨幣の国際入札についての情報収集などを強化。日本との国交樹立や国際会議の開催などの節目を迎えた国に、外務省を通じて記念貨幣製造のアピールも重ね、受注を勝ち取ってきた。

国際的な評価にもつながった。12年には世界造幣局長会議で、岩手県の世界遺産・中尊寺金色堂をあしらった記念硬貨が「最も美しい貨幣賞」を受賞。17年にも米国で貨幣カタログを発行する出版社の賞「コイン・オブ・ザ・イヤー」で、東日本大震災復興事業記念貨幣が部門賞に選ばれた。

同局広報室は「日本の技術力は世界からも注目されており、需要は高い。可能な限り、維持する努力を続けたい」とする。

■高い技術力で売り込み

外国貨幣の製造受注で、日本の“売り”ともなっている高い技術力。金属だけに紙幣と比べて複雑な細工が難しく、偽造、変造されやすい硬貨で、日本独自の精巧な防止策を生み出している。

大規模な硬貨の偽変造では、1990年代後半から2000年にかけて、韓国の500ウォン硬貨の表面を削り、500円硬貨と同じ重さにして自動販売機に投入、釣り銭を盗む事件が、兵庫県内を含む全国で相次いだ。警察庁などによると、1998年に358枚だった偽変造500円硬貨の発見枚数は翌99年に7336枚、2000年に入っても4747枚と、1万円札などの偽造紙幣を大きく上回った。

対策として財務省は同年8月、新しい500円硬貨の流通を開始。見る角度によってゼロの文字の中央に別の文字や模様を浮かび上がらせる「潜像」や、硬貨の側面に大量生産貨幣としては世界初となる「斜めギザ」を施した。「効果の程は不明」(造幣局)だが、15年の1年間に発見された偽変造500円は635枚にまで減った。

一方で、自動販売機なども高性能化した影響で、古くなって摩耗するなどした硬貨が使えなくなるケースも増え、同局広報室は「なるべく早く硬貨を更新していくしかない」と話す。

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