「呉善花の警告」

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韓国は「北朝鮮化」したと思ってかかれ

河野談話を上回る失態

「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録をめぐって今韓国がおおいに盛り上がっています。日本が国際社会の公の場で「強制労働」「強制連行」を認めたというのです。日本政府は「強制連行」を認めてはいない、「強制労働」を意味するものではないなどと釈明しています。

しかし英文でユネスコの文書には英語で「force to work…」となっています。英文で何と記録されたかが重要です。言い訳は通用しないと思います。

今回のことが何を意味するのか。日本の皆さんはまだピンときていないかもしれません。しかし、世界のメディアは今回の出来事をどう報じているでしょう。

英国の代表紙、テレグラフの見出しは「日本の奴隷労働の跡地が世界遺産を獲得」でした。奴隷労働という言葉で報じているのです。

また、ガーディアンは「日本の遺産は、強制労働の事実を認めた後に世界遺産登録を獲得」と報じました。

米CNNは「かつて凶行がおこなわれた戦争犯罪の現場─日本の推薦世界産業遺産」と報じ、ワシントン・ポストは「日韓政府は産業遺産、特に軍艦島での戦時強制労働の歴史を認めることで合意に至る」と強制労働と言う言葉を使いました。

米ABCは「日本からの推薦遺産は日韓の口げんか、日本が戦時強制労働特に軍艦島において認める合意後に全会一致で承認された」としており、米紙フォーブスは「日韓が合意:日本ユネスコ遺産での朝鮮人強制労働を深く反省」となっていました。

シンガポール紙トゥデイは「日本のユネスコ産業遺産登録に様々な反応」ですが「日本も韓国政府が外交的に勝利を収める、日本も数万人の韓国人や中国人そして捕虜を戦争末期の労働力不足を補うために数十カ所の工場や鉱山そして他の産業施設で働かせたことに同意した」と報じました。(著者訳)

近代国家として力強く進んでいった日本の誇りの詰まった文化財を世界的に公認してもらうはずの話が、韓国人を奴隷にし、強制労働によって成り立っていた、世界遺産はその拠点だったという話にすり替わってしまったのです。なぜ、英語で「force to work」などという表現を入れてしまったのでしょうか。言葉もありません。

これ以上の汚辱はないと思います。私は今回の出来事は河野談話以上の深刻な失態だと思っています。私はこれまで日本人の“お人好し”について美徳だと述べてきました。しかし美徳にも限度はあります。愚かです。

日本政府関係者が帰国後の記者会見で「砂を噛むような思いだった」とこぼしていました。しかし、砂を噛むような思いをこれから味わうのは世界遺産登録を楽しみにしていた関係者であり、日本人だと思います。この問題は慰安婦問題以上の禍根をもたらすのではないか。そのくらい重大だと思います。

韓国の“変貌”を疑わなかった日本

予兆はありました。今回韓国の外務部長官が訪日、日本の外務大臣と会談したというニュースが流れた時から、私は「これは絶対怪しい」と直感しました。というのはその直前まで、MERS問題で大荒れの最中にもかかわらず、韓国の外務部長官はドイツまで足を運んで日本の世界遺産を認めてはいけないと働きかけていたからでした。

韓国では長い時間を掛けて日本の世界遺産を絶対認めさせてはいけないと準備を積み重ねてきたのです。朴槿惠大統領は自ら世界の首脳と会うたびに、この話をあえて切り出していました。まさに国家を挙げた課題といっていいでしょう。それがいきなり日本に来て、にこにこ笑って会談しましょうというのです。素朴に私は韓国が一日にして変わるはずがないと直観しました。危なく怪しかったのです。

しかし、一方でどうして日本人はそれを疑わないのか。これが不思議で仕方ありませんでした。すごく驚いたのは、翌日の日本のマスコミほとんどが韓国がすり寄ってきていると報じたことでした。日本の保守派の方々までがそうでした。

安倍晋三総理が米国に行って演説され、高い評価を受けた。中国も最近日本に少しだけすり寄ってきている。それで、韓国は孤独感をつのらせている、韓国経済は今、ほんとによくない。だから朴大統領は焦っているといった解説が多かったように思います。

しかし、韓国は原理原則で動く国です。誰に何と言われようとも、これが絶対だと思ったら簡単には曲げません。そのことをしっかり認識していれば、外務部長官が笑顔で寄ってくる光景に「果たしてあれほど執拗だった韓国が一日で変わるだろうか」くらいの疑義は抱いてほしいものです。

韓国はドイツまで行ったのち方針を変えました。世界遺産登録が認められる。それが不可避なのであれば、それをやめさせるのではなく、協力する形を取ろう。そしてその際に強制労働、強制という言葉を必ず使わせる。そう狙っていたのだと思う。そうすれば、自分達の目的は達せられるわけです。

そこを足掛かりに安倍晋三総理が出す戦後70年談話につなげたい。それが韓国の狙いだと思うのです。実際、韓国は外務大臣級の会談が終わったら、首脳会談に持っていきたいと持ちかけています。戦後70年談話に強制的なニュアンスを盛り込ませ、国家としての謝罪と賠償を求めていく。これは単に世界遺産だけにとどまらない話で韓国はそう思い描いているはずです。日本は相当慎重に臨まなければならないと思っています。

韓国人は“攪乱”を得意とする

韓国人は“攪乱”を得意とする

 相手に考える時間を与えずに振り回しながら、自分の思惑を果たす。こうしたやり方は韓国人が最も得意とするやり方だと思います。今回も会場で韓国はさんざんかき回しました。不意を突かれた結果、世界遺産の登録決定は一日先延ばしになり、そして韓国側は目的を達成しました。実は、これに似たような出来事を私もいやと言うほど味わったことがあります。

 私が韓国のマスコミに叩かれたときの話です。韓国のメディアは私のみならず、私の知り合い、友人などにまで一斉に取材をかけるのです。それだけで大混乱に陥ってしまいます。

 例えば、知り合いの経済専門家のところには日韓経済の話を聞きたいと、韓国で有名なテレビ番組がインタビューを申し込みました。それでインタビューも佳境を過ぎたあたりで突然、呉善花の話を切り出す。呉善花がいかに卑怯なのか、呉善花がいかにとんでもない人物かという話をぶつけ、反応を記録していきます。

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 本当ははじめからそれがインタビューの狙いでした。そういう番組をつくりたかったわけです。呉善花の話ばかり、突然執拗に振られる不自然さに「これはおかしい」と思ったその方は「帰れ」と怒ったそうです。すると「じゃあ、話題を変えます」といったん収まってしまう。ですが時間が経つと今度は「あの事件をどう思いますか」と脈絡なく聞いたというのです。

 以前日本で起きたある有名な犯罪事件に関する質問でした。その専門家は「それは犯罪です。とんでもない話です」と答えたそうです。

 一時間半に及ぶインタビューが終わって番組を見たら、あれだけ熱心に答えていた日韓経済についての話は一切なく、自分が呉善花について「とんでもない」と語っているように切り取られて使われていたそうです。一事が万事こんなやり方なのです。

物事の裏についてナイーブすぎる

 韓国では強制連行、強制労働を日本が自ら認めたということで大騒ぎになっています。韓国の外務部長官は「これだけの難しい難問を対話で解決できた最初の例で大きな意義がある」とまるで自分が歴史をつくったような口ぶりで自画自賛しています。

 日本政府は「強制連行」を認めたのではない、といっている。しかし、ここに韓国政府は反応せず、沈黙を守っています。これは内心、嘲笑っているからだと思います。先ほども述べましたが問題は英文でどう書かれたかでしょう。韓国では、そこで勝負がついていると言っているのです。

 韓国という近い国が何を考えているのか、あまりに日本人は知らなさすぎると思います。物事の裏についてナイーブで読めなさすぎです。韓国は別に日本と仲良くしたいなどとは思っていないのです。

 それを間違えて日本から対立をなくしたい、手を結びたい、仲良くしようとするから足もとをすくわれてしまうのです。日本は韓国と無理してつきあう必要はない。そのくらいに考えていた方がいいのです。

国民情緒法という難物

 そう申しあげた理由の一つは、まず韓国の後ろに中国がいるという事情があります。韓国は今、中国にものすごく配慮しているのです。中国抜きにして日本と仲良くすることなどできません。日本と仲良くすると中国から怒られることになりかねない。韓国には今、中国を怒らせたくないという気持ちがとても強いのです。

 それともう一つは、今の韓国の背後には北朝鮮がいるということです。特に反日の裏で北朝鮮がうごめいていることを見逃してはいけません。なぜ北朝鮮がうごめいているのか。複雑な問題なのですが、今の朴槿惠政権は日本をなんとか孤立させようと─簡単に言えば中国と米国を仲良くさせ、北朝鮮とも和解を図ろうと─躍起になっています。

 その背景には国民情緒法というものがあります。私は8月に朴大統領に関する書籍を出しますが一番のポイントがこの国民情緒法です。国民情緒法というのは韓国独特の法論理で、国民情緒に合致すれば、司法は実定法に拘束されずに判決を出せるというものです。

 常識的にいえば、そんなことを許せば罪刑法定主義を否定してしまうことになってしまいます。しかし韓国ではそういう法理が現にあります。そしてそれは法律より国民感情が優先するという韓国独特の風潮にもなっています。この国民情緒を優先する風潮が朴政権をどれだけむしばんでいるのか、そして韓国がどれだけ親北化しているのか。そうした動きを読み解く書物です。

 もともと、韓国には反日という対立の火種がありました。李承晩などはその典型です。しかし彼は、政治や外交の場には─どんなに教育の場で反日が根付くべく激しい反日教育を続けていても─そうした感情的で情緒的な要素は、あまり持ち込まなかった。そうした国民情緒をいったん棚上げして表に出さない。それで日本と向き合ってきたのです。

 特にそれは朴槿惠の父、朴正煕に顕著でした。反日教育はするが日本の協力を受けながら韓国の経済発展を遂げる。そういう選択をしてきたのです。プロに徹した姿勢といってもいいと思います。

 細かくいえばいろいろなことはありましたが、これは全斗煥や盧泰愚までの軍人出身の大統領に基本的に受け継がれ、事をあまり荒らげたりはしない。韓国も良好な関係を築くことを望んでおり、日本の良識が比較的通じる出来事が多かったのではないかと思います。

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韓国における「民主化」という多義語

これが変わったのは金泳三のときからでした。民主化大統領と呼ばれた金泳三の時代から日本とのこじれた関係が始まる。それは今やこじれにこじれています。

金泳三時代には慰安婦問題が俎上に上るようになりました。金泳三、金大中、盧武鉉と民主化大統領が続くなかで今の最悪ともいえる日韓関係への流れがつくられていったのです。

金泳三時代に民主化という言葉は「反軍事」を意味していました。民主という言葉は民主主義の民主ですが、当時の韓国では盧泰愚まで三代続いた軍事政権の反語として用いられたのです

軍事政権は在韓米軍とも密接に結びついていました。「反軍事」から出てきた「民主化」という言葉は「反軍事」に「反在韓米軍」という意味を帯びます。それは「反米」という文脈に転化していき、やがて「反米」は「民族主義」とも結びついていくのです。

今でもそうですが、当時の韓国も深刻な社会問題をたくさん抱えていました。それを韓国国内では、米国と結びついて西洋化が図られたために、だんだん個人主義がもたらされた結果である、と読み解くのです。

西洋化によって今まで民族が大切にしてきた伝統的な儒教的価値観は崩れ、家族関係も核家族化が進んで崩れ、それが今日の荒廃を生んだ─というわけです。そうして「民主化」という言葉は「民族主義」とも結びついていきます。

今度はそれが「親北」へとつながっていくのです。北朝鮮はとても貧しい。独裁国家でもある。とてもあんな国にはなりたくない。しかし、少なくともわれわれと同じ民族である、われわれのように米国に頼って生きているのではない。貧しくても主体的な思想を持って民族として誇り高い生き方を続けている─というわけです。

こうして「民主化」という言葉は様々な意味が付加されたり、変容を重ねながら「親北」という意味も帯びるようになっていくわけです。

なぜ親北が反日と結びつくのか

金大中元大統領の時代には太陽政策が掲げられました。金正日との南北首脳会談が実現し、金大中はノーベル平和賞を手にしました。太陽政策はイソップ寓話『北風と太陽』になぞらえ「北朝鮮の頑な態度を改めさせるためには、圧力ではなく温情が必要である」という考えから融和的な政策をとりました。

これは盧武鉉政権にも引き継がれました。軍事力での統一よりも人道援助、経済援助、文化交流、観光事業を深める。それで将来の南北朝鮮統一を図ろうとする外交政策ですが紛れもなく親北の政策です。

こうして「親北=民主」という構図ができ、盧武鉉時代に「反日」であることも「民主」であることだとなって、「親北=反日=民主」というイデオロギーが国内に根付いていったのです。

盧武鉉は「過去清算」というスローガンを掲げました。そして「過去清算」の矛先は日本に向きます。北朝鮮では親日派、つまり「何らかの形で日本統治政策に協力した者たち」は、悪逆な犯罪者・売国奴としてことごとく粛正されました。

韓国も北朝鮮同様に反日国家ではあるものの、「日本統治時代の親日行為は当時の事情では仕方なかったこと」だとして不問に付すのを社会一般の習いとしてきました。盧武鉉は、それでは「過去清算」にはならないとして、親日派を一掃しはじめたのです。これでもともと韓国にあった反日が鮮明に顕在化していきました。

盧武鉉時代に「親北=民主」が確立されていったのは、金大中時代から北のスパイが韓国国内に大勢入ってきたことが関係しています。そうした層は「従北」と呼ばれるのですが、国内に12万とも15万とも言われています。直接的なスパイもいれば、間接的なスパイなども含めて「従北」「親北」勢力が広がり、こうした人達はマスコミ、大学、専門家や裁判官などあらゆる分野に浸透を図っていったのです。

朴槿惠は親北の政治家である

そして今の朴槿惠大統領ですが、韓国の政治家の例にもれず、親北姿勢の政治家です。彼女は野党党首時代に、北朝鮮に行って、金正日と握手しています。そのときに彼女が言った台詞が「二世同士うまくやりましょう」でした。

そのさい金正日は謝ってきたそうです。朴槿惠のお母さんは文世光という北朝鮮のスパイによって殺されました。金正日はそのときの事実関係を認めて「自分の意志じゃなくて、下の人たちがもう勝手にやってしまって申し訳なかった」と謝罪したというのです。

朴槿惠の本などを見ると、彼女は金正日をかなり評価しています。実際、それ以来、彼女は北朝鮮に対してあまり激しいことは言わないのです。朴槿惠自身がかなりの親北で、これまでも北朝鮮を刺激しないように努めているというわけです。

それに朴槿惠の場合、自分の今の大統領という立場が実はぎりぎりの辛勝で得られているという事情もあります。「反北」では票が得られない。だから政治生命を維持するために親北を取り込まなければいけない。韓国社会の親北化は相当広がっていて特に若い人ほど親北の傾向が強いのです。

たとえば、朴槿恵が大統領となった2012年の大統領選挙では、太陽政策の再開を掲げた親北の対立候補は、敗れたものの実に48%を超える得票率を獲得しています。

朴槿惠の支持層は年配の方たちが中心です。彼女には若いほど反朴槿惠の傾向が強いというジレンマがあります。

一方で韓国内の保守派たちは頑張ってなんとか反北を維持しなければならない、親北の浸透を何とか防がなければならないと考えています。ですが、この数が決定的に少なく力にならない。それで与党の中では朴槿惠離れ─今の与党内では反朴槿惠となっています─が起きています。

日本の良識が通じない国となった、韓国

冒頭の世界遺産の話のなかで私は韓国人がどのように考える傾向があるのかという点について日本人は知らなさすぎるといいました。なぜ、民主化という言葉が、民主主義発祥の地である米国に反旗を翻す「反米」とつながるのか。

それがなぜ反日と化すのか。さらにそれがどう親北となっていくのか…など日本人から見るとこうした点はなかなか、理解しづらいようです。

ただ、かつては比較的良識が通じていた韓国は過去のものとなっています。親北、従北勢力の浸透とともに大統領までが親北色が強まっていること、親北勢力の顔色をうかがうまでになっていること、従って朴槿惠の反日的な行動は単なる人気取りや一時的な奇策ではなく、根の深い問題であって日本人的な良識は今後、同じようには通用しないでしょう。

対応を誤ると、今回の世界遺産の出来事のように足元を救われかねない出来事は今後も続くでしょう。

あそこは韓国ではない、少し極端な言い方をすれば韓国は北朝鮮と同じなのだ、くらいに警戒しなければならない。そういう認識と覚悟をしっかりともって韓国に臨まなければならないと考えています。

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