「断交」

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トランプ米大統領の中東歴訪からわずか約2週間。地域大国サウジアラビアを中心とする5カ国が、同じイスラム教スンニ派のカタールと断交に踏み切った背景には、何があったのか。

カタールは、サウジが脅威と認識するシーア派大国イランに融和的な姿勢を見せてきたほか、域内で警戒論が強いイスラム教原理主義組織ムスリム同胞団の「保護者」としても振る舞ってきた。豊富な天然資源を有する富裕国でもある。

カタールはいわば、スンニ派の盟主を自任するサウジに逆らう形で独自の存在感を発揮してきており、だからこそサウジの“逆鱗”に触れたのだといえる。

カタールをめぐっては、2014年に同胞団を支援したとの理由でサウジなどが大使を召還するなど、火種がくすぶっていた。イスラム世界の変革を求める同胞団の思想が広がることは反王制運動につながりかねず、サウジにすれば体制を脅かす危険組織と映る。それを支援することは、同じ君主制国家のカタールといえど同罪というわけだ。

サウジはまた、ペルシャ湾を隔てて対峙(たいじ)するイランが、核・ミサイル技術の開発や、サウジ国内のシーア派などを通じた工作で、自国への圧迫を強めていると受け止めている。昨年1月にはイランと断交。近年は、対イランを念頭に置いたスンニ派同盟の枠組み作りにも取り組んできた。

サウジは今回、カタールが、イランがイエメンで支援するシーア派系武装勢力を手助けしたと非難。真偽は不明だが、対イランでサウジとは一線を画した外交を展開するカタールは、サウジにとっては足並みを乱す厄介者だ。今回の断交措置にはそれを懲らしめる意味合いがある。

一方、今回の断交を受け、ティラーソン米国務長官は5日、湾岸諸国の団結を促す声明を出した。トランプ氏が5月、サウジを初外遊先に選び、対テロでのアラブ諸国の結束をうたった直後だけに、事態の激変に困惑している様子もにじむ。米国のメンツを無視するような今回の断交劇は、米国の中東地域への影響力が大きく低下している現実も示している。

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