「ぬらりくらり」

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今、北朝鮮問題への中国の関与が世界的に注目されている。米トランプ政権が問題解決へ向けて中国の役割を大いに期待していることは周知の通りだ。ならば中国は果たして、期待されるような働きをしてくれるのだろうか。中国にとって北朝鮮、あるいは北朝鮮問題とは何か、を見てみよう。

北朝鮮は以前から、中国にとって「話を聞かない厄介な弟分」という面は確かにある。しかしその一方で、中国からすれば北朝鮮は、さまざまな利用価値のある「貴重な存在」でもある。

例えば、鄧小平時代以来の中国の歴代政権が最も重要視している対米外交において、北朝鮮は時々、中国にとって有効なカードの一枚になるのである。北朝鮮が何らかの際どいことをやって暴れ出すと、アメリカは必ず中国に頭を下げて協力を求めてくるから、その分、中国のアメリカに対する立場が強くなる。

今の米中関係はまさにそうである。当選した当時、中国に対して厳しい姿勢を示したトランプ大統領は、徐々に態度を変え、習近平国家主席に「絶対的な信頼をおく」と公言するまでに至っているが、大統領「豹変(ひょうへん)」の背後にあったのが北朝鮮危機であることは明白だ。ある意味では、北朝鮮危機のおかげで習主席は、本来なら中国に向けられたはずのトランプ政権の矛先をうまくかわすことができた、ということである。

世界に脅威を与えている北朝鮮の核保有も、中国の目からすれば別の意味を持つものとなる。北朝鮮の核が世界にとって脅威であれば、あるほど、その脅威が現実的なものとなれば、なるほど、アジアや世界に対する中国の軍事的脅威は影を薄め、忘れられてしまうからである。

実際、今年に入って北朝鮮危機が高まって以来、中国が南シナ海で何をしているかは、もはやアメリカやアジア諸国の関心の焦点では無くなっている。そういう意味で北朝鮮の核の脅威は、中国が自らの覇権主義戦略をひそかに推進していくための「隠れみの」にもなっている。

北朝鮮の存在と脅威が中国にとってそれほど有用なものであるなら、習近平政権は決して、北朝鮮問題の完全解決に本腰を入れようとしないであろう。実際、この原稿を書いている12日現在まで、中国が問題解決のために奔走した痕跡はまったくないし、北朝鮮の核放棄に向かって何かの決定的な解決策を打ち出したこともない。

中国の王毅外相に至っては、「解決の鍵は中国の手にはない」と強調する一方、「北朝鮮危機が制御不能となる可能性がある」と、まるで傍観者であるかのような振る舞いに徹している。

つまり中国は、本気で北朝鮮問題を何とかしようとは考えていない。それもそのはず、北朝鮮が「問題」であって「脅威」であるからこそ、中国にとって利用価値があるからである。

北朝鮮問題が完全解決された暁には、中国は一気に、対米外交における最も有力なカードと、自らの拡大戦略推進の「隠れみの」を失うのである。したがって習近平政権は、トランプ大統領に協力する素ぶりで「努力」しているかのように見せているが、石油供給の完全停止など、思い切った北朝鮮制御の「必殺の剣」は決して抜かない。

おそらくトランプ大統領はそれが分かってきており、習主席が、もはや頼りにならないと悟ったからこそ、金正恩朝鮮労働党委員長との直接対話の可能性に言及して、それを模索し始めているのだ。

しかしもし、トランプ大統領と金正恩氏との直接対話が実現し、北朝鮮問題解決の道筋がつけられた場合、習主席自身が世界一の「信用できない男」になってしまうだけでなく、トランプ政権の矛先は再び中国へ向けられることになろう。

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