「地銀が危ない?」

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地銀が危ない? 大手行が地銀に事実上のリスクつけ回し 
マイナス金利で追い詰められ、甘いリスク管理

「当期の利益が大幅に減少したり、赤字になることを防ぐため、証券運用収入への依存度が高くなっている地域金融機関がある。含み損の拡大が来期以降の経営に悪影響を及ぼすにもかかわらず、足元を取り繕おうとするのは経営姿勢としていかがなものか」

金融庁幹部は今月中~下旬の銀行決算を前に、地域金融機関の過大な証券運用にこう懸念を示す。実は金融庁は銀行の証券運用の実態とそのリスク管理についてモニタリングを実施している。その中で浮かび上がってきたのは、甘いリスク管理の下、証券運用に傾斜する危うい地域金融機関の現状だった。例えば、「債券の含み損が拡大しているにもかかわらず、穴埋めの原資が直ちに見つからず、当期の利益減少を避けたいために損切りをせずに保有している事例」(金融庁関係者)などだ。

日銀のマイナス金利政策の導入により、地域金融機関を中心に利鞘の縮小に苦慮しているが、その打開策として証券投資や不動産投資に資産を振り向けている。一見、合理性のある経営判断ではあるが、その前提としてしっかりとしたリスク管理が整備されている必要がある。収益減を取り繕うための安易な証券運用は経営を揺るがすリスクへと波及しかねない。

そうした証券運用にあって新たなリスク要因として懸念され始めているものに、「オリジネート&ディストリビューション・ビジネス」と呼ばれる市場がある。同ビジネスは、少額の資本で、多額の貸出を行い、これを流動化して投資家に販売するもので、バランスシートを節約して収益を上げる金融テクニックのひとつに位置付けられる。

主にメガバンクなど大手行が手掛けているビジネスで、流動化された債権の購入者は地域金融機関が中心となっている。人口減少に伴う地域経済の縮小に喘ぐ地域金融機関にとって、地元に有力な貸出先を抱えるところは少ない。このため県境を跨いで近隣の地域へと営業を拡大したり、資金需要の旺盛な首都圏をはじめとした中核経済圏へ進出せざるを得ない状況に追い込まれている。特に、2020年の東京オリンピックを控え大規模開発が進む東京にこぞって進出しており、不動産事業への貸出に集中する傾向が強まっている。

この不動産向け融資の傾斜は、地域金融機関の貸出ポートフォリオをいびつなものへと変化させつつある。特定の業種への貸出の集中はリスク増大の裏返しでもあり、地域金融機関の収益基盤を脆弱化させかねない。

「オリジネート&ディストリビューション・ビジネス」は、こうしたいびつ化した貸出ポートフォリオのリスクを分散化したものへと組み替える有力な手段ともなる。いわば金融機関の「バランスシート・コントロール」を支援するビジネスでもある。

しかし、その一方で、同ビジネスに伴うリスクにも留意する必要がある。特に、足下のマイナス金利政策で収益が圧迫されている地域金融機関の中には、高い利回りを求めるあまり、商品の詳細や特性を十分に吟味せずに高リスクの流動化された債権を購入するところが散見されることだ。また、主要行との取引関係に依拠して安易に提供された債権を買い入れている地域金融機関もあると行政関係者は指摘する。

証券化商品については、リーマンショックの主因となったサブプライムローンの証券化問題がある。同証券化の原債権は個人向けの住宅ローンで、低所得者向けで焦げ付くリスクが高かったにもかかわらず、格付け会社も組成に関与して高格付けを付与した。日本の投資家も表面上の高格付けのみに依拠して安易に購入した結果、大きな損失を被ったことは記憶に新しい。

一方、「オリジネート&ディストリビューション・ビジネス」の原債権は企業向け貸出債権であるが、仕組みはサブプライムローン証券化商品と変わらない。商品特性やリスク特性には十分に留意する必要があろう。

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