「中国外資規制緩和」

画像の説明
中国 自動車メーカーの外資規制緩和へ 「パクリ」横行・国内メーカーの膿出し切れるか

中国市場に参入する外資系自動車メーカーが現地合弁会社に出資する際の上限規制について、中国政府は2025年を目標に緩和すると発表した。中国では政府の積極的な外資開放政策に伴い、さまざまな業界で出資比率が緩和されていたが、自動車業界だけが“聖域”となっていた。規制緩和の狙いは、自国の貿易赤字削減を図りたい米トランプ政権への配慮というよりも、慢心する中国自動車メーカーへの戒めだとの指摘がある。

問題となっている規制は、外国企業との合弁会社を設立する際の中国企業の出資比率を51%以上とするもの。ブルームバーグによると、中国当局が4月25日に発表した自動車産業発展に向けた計画に外資規制の緩和が盛り込まれた。

中国では、世界貿易機関(WTO)に加盟して15年余りが経過し、市場開放は徐々に進んでいる。ロイターによると、中国国務院は1月17日、外資に対してさらに開放する方策をとると発表。外資による投資規制が緩和される分野として、銀行や証券、保険、会計処理などを挙げた。今後、上海や深●(=土へんに川)の両証券取引所での外資企業による上場が認められる。

自動車産業については、14年や昨年6月に中国政府が規制緩和を検討していることが明らかになったものの、今まで実現していなかった。国営6大メーカーをはじめとする既得権益層が、日米欧との合弁会社から得た利益を手放したくないからだ。

トランプ米大統領の誕生で流れ一転

ブルームバーグによれば、業界団体は「自動車産業を発展させる主導権を今、手放せば、業界は外国車の加工工場になり下がってしまう」(中国自動車工業協会)、「競争力が十分でない中国の自動車メーカーは、政策変更によって崩壊しかねない」(全国乗用車市場情報連合会)と猛反対。長城汽車の魏建軍会長にいたっては「中国メーカーは依然、ブランド形成の初期段階だ」とプライドをかなぐり捨てたかのようにメディアで訴えていた。

「規制緩和がイノベーションや品質向上につながる」と真っ当な主張をする、ボルボ乗用車部門「ボルボ・カーズ」を傘下に擁する浙江吉利控股集団は、少数意見に過ぎなかった。

こうした流れが一転したのは、トランプ米大統領の誕生だ。中国の習近平国家主席は4月にトランプ氏と会談し、貿易不均衡是正に向けた100日計画で合意した。自動車分野における規制緩和をアピールすることで、米国に配慮したとみられる。

中国政府には、米国という“外圧”を利用し、自動車産業の膿を出したいという思惑もある。

国内メーカー支援も結局、合弁ブランド車に頼った各社

中国政府は04年、自動車産業発展政策を全面改定し、「10年までに世界の主要自動車生産国となり、輸出力を持つ」、「国内シェア15%以上の大型自動車企業集団を育成する」など、国内自動車産業の成長戦略を打ち出した。税制などで小型車購入を優遇し、国内メーカーを支援したのだ。

その結果、中国の16年の自動車生産台数は約2812万台の世界一で、目標を達成したが、国内メーカー各社は合弁ブランド車を利益率の高い国内で販売し続けており、同年の輸出台数は前年比2.7%減の70.8万台にとどまった。中国自動車メーカーは中小を合わせると100社超あるとされ、競争力のあるメーカーの育成が進んでいない。

こうした状況は自主ブランドの低迷を招いた。自主ブランドは、優遇税制の追い風でいったんは生産能力を増強したものの、高級志向の中国国民に受け入れられず、国内販売シェアは40%前後で横ばいだ。

現地メディア「捜狐」によれば、自主ブランドの人気が今一つである理由として、ユーザー目線に立った商品改善を怠るメーカーの慢心を挙げた。スポーツ用多目的車(SUV)人気で中国の各メーカーはこぞって「パクリ」SUVを作っているものの、所詮はパクリであり、中国の消費者のニーズに応じた製品開発をしていない、と断じている。

現時点で、中国政府は規制緩和の具体的な進め方などの詳細については明らかにしていない。中国政府が、国内自動車メーカーの反発を抑えられずに具体策でもたつくようだと、自動車産業を主力基幹産業と位置づける目標の達成は遠のくばかりだ。

コメント


認証コード1109

コメントは管理者の承認後に表示されます。