「宇宙のごみ掃除、うまいのは日本」

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宇宙ビジネスがこれからの成長産業として注目されている。人工衛星やロケットを使った各種地球観測、宇宙資源探索、通信・データー処理、輸送、宇宙旅行、それらに関連する部品、素材などの分野で大きなビジネスチャンスが生まれると期待されている。

宇宙ビジネスが注目されるようになった理由はいくつかあるが、最大の理由は、センサーやCPU(中央演算処理装置)などICT(情報通信技術)部品の大幅な価格低下で衛星の製造やロケットの打ち上げが以前には考えられなかったような低コストで賄えるようになったことだ。
 
以前はこの分野はお金がかかり過ぎるため、各国とも国家プロジェクトとして取り組んできたが、最近では民間企業の参入が可能になっている。世界の宇宙関連ベンチャービジネスへの投資は、この数年急増しており、昨年(16年)は27億ドル(約3000億円)を超えたと推定されている。今後様々な目的をもった小型衛星が官民合わせて多数打ち上げられる見通しで、数年後には「1兆円を超える投資がみこまれる」との強気の見方も出ている。
 
宇宙ビジネスが注目される中で、懸念されているのが宇宙ごみの存在だ。宇宙ごみとは寿命の尽きた人工衛星やロケットの残骸など宇宙に漂う部品、破片などのことで、デブリ(debris、破片)と呼んでいる。デブリは秒速7〜8キロメートルの高速で地球を回っている。

1〜10センチのデブリは数十万個と推測、10センチ以上のデブリは1万8000個近くが地上の大型光学望遠鏡などから観測されている。10センチ以上のデブリは90年頃には5000個程度だったが、2000年以降急増している。
 
JAXA(宇宙航空研究開発機構)によると、宇宙活動が始まった1957年以降、全世界で7千個を超える人工衛星が打ち上げられた。そのうち壊れるなどして発生した10センチ以上のデブリが上記の数字だ。デブリの約94%が宇宙開発大国のロシア、米国、中国の3カ国から打ち上げられた衛星やロケットの残骸だ。特に2007年に中国が宇宙空間で衛星破壊の実験をし、大量のデブリを発生させてしまった。
 
宇宙を漂うデブリが増えることで、人工衛星との衝突など予期せぬ事故が頻発してくる可能性がある。2009年には運用を終えたロシアの軍用衛星と米国の商用通信衛星が衝突事故を起こした。13年にはエクアドルが初めて打ち上げた小型衛星とロシアのロケットの残骸が衝突し、衛星は通信不能になった。
 
今後民間も加わって衛星の打ち上げが急増することが予想されるため、これまでほとんど手つかずのまま放置されてきた宇宙ごみの掃除が急務になっている。
 
日本を含め米中ロなど宇宙開発大国は地上観測を強化し、新規デブリの発見や軌道など基礎データーの把握に力を入れている。
 
具体的なデブリ除去対策としては官民が様々な技術開発に取り組み始めている。たとえばJAXAは宇宙空間で大型デブリに長いヒモ(電線)を取り付け、電流を流しデブリの速度を減速させ大気中に落下させる技術に取り組んでいる。

川崎重工はデブリ除去専用の小型衛星を開発中だ。重さ約5トンの2段ロケットの残骸デブリを捕獲し一緒に大気圏に突入し燃やし尽くす技術だ。

シンガポールに本拠を置く日の丸ベンチャー、アストロスケール(岡田光信CEO)は、ロケットで母艦の除去衛星を宇宙空間に打ち上げ、母艦からデブリを吸着させる子機を発射し、大気圏に落として燃え尽きる技術をほぼ完成させている。
 
IHIや九州大学は巨大なマットのような素材を宇宙空間に広げ小さなデブリを貫通させ速度を落とす方法を研究している。
 
国連が定めたルールでは使い終わった衛星は25年以内に大気圏に突入させるか他の衛星のいない軌道に移さなければならない。しかしルールを守っていない国も多い。宇宙ごみを掃除する試みはまだ始まったばかりだが、宇宙ビジネスの発展のためにはこの掃除は欠かせない。その成果を期待したい。

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