「ヤバイ問題」

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コミーFBI長官解任 ウォーターゲート事件に酷似
ロシアゲート隠しは大統領の命取りになりかねない

ニクソン大統領が辞任に追い込まれたウォーターゲート(WG)事件とますます似てきた。コミーFBI(米連邦捜査局)長官の突然の解任を、WG事件の「土曜日の虐殺」(後述)になぞらえる米メディアが出てきた。成り行き次第では、トランプ大統領の命取りにもなりかねない人事だ。

ヒラリー陣営のメール捜査での判断ミスをコミー解任の理由にするが、メディアは、大統領選へのロシア当局の介入を捜査しているFBIに圧力をかけるのが本音と見抜いている。

大統領就任前の記者会見で、ロシアとの関係を聞かれたトランプ氏が激高した異常さに着目し「ロシアゲートが始まった?――ニクソンの轍にはまるのか」とこの欄に書いたのが4か月前。コミー解任で「ロシアゲート」は火を噴き始めた。

「土曜日の虐殺」とは、WG疑惑を捜査していたコックス特別検察官の解任を命じたニクソン大統領に抗議して、司法長官、同副長官が辞任した1973年10月20日が土曜日だったことから。結局、司法省のナンバー3が、コックスを解任した。

ニクソン再選工作で、ウォーターゲート・ビル内の民主党全国委員会に盗聴装置を仕掛けた一味が逮捕されたのが72年6月。

コックス特別検察官の任命が翌73年5月、その5か月後、大統領執務室での会話を記録したテープの提出を求めたコックスが解任される。「土曜日の虐殺」はWGスキャンダルの火に油を注ぐ形になり、議会が司法妨害などで大統領弾劾に動き翌年8月、ニクソンが辞任した。

トランプ政権は出だしから「ロシア」でつまずいた。フリン安全保障担当補佐官が就任前のロシア側との接触を理由に解任され、同氏は刑事訴追される可能性もある。ほかに、ロシアとの関係が疑われる元トランプ選対幹部もいる。

司法長官のセッションズ氏も、議会での指名公聴会で、ロシア大使との接触などを隠していたことが問題になり、ロシア関係の捜査にはタッチしないと表明していた。そのセッションズ長官の助言で、コミー氏を解任したのだから、ますます怪しい。

コミー氏は先月の議会証言で、ロシアの大統領選干渉問題のFBIの捜査は、昨年7月から続いていて、トランプ陣営がロシアの工作に加担していたかどうかも、捜査の対象と述べていた。

ロシア疑惑は選挙干渉だけではない。トランプ氏本人のロシア国内での不品行の証拠映像を、ロシア当局が握っているという説まである。

米議会は、上下両院の情報委員会で、ロシアの選挙干渉問題の調査を続けているが、コミー解任で、議会は、ますます調査に熱を入れるだろう。特別検察官の任命を求める動きも出るかもしれない。

ニクソン辞任は、WG事件の発端から2年2か月後、「土曜日の虐殺」から10か月後だった。辞任した74年は、秋に中間選挙を控え、与党の共和党議員たちも見限ったことで、ニクソンの命脈が絶たれた。

つい比べたくなる。来年は中間選挙の年だ。FBIの捜査開始から9か月、コミー解任は「火曜日の処刑」とでも呼ばれることになるのだろうか。

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