「認知症と銀行口座」

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親の「認知症」を金融機関に知られると、親の口座はすぐ凍結される

親が高齢になると、子として避けて通れないのが介護の問題。特にその費用に関して、親が持つ資産をアテにしている場合、事前にきちんと準備をしておかないと、予想外の出費や負担に悩まされることも……。そういった事態への対策として、無料メルマガ『一緒に歩もう!小富豪への道』の著者で、銀座なみきFP事務所の代表取締役を務めるファイナンシャル・プランナーの田中徹郎さんが勧めているのが、民事信託の一種である「家族信託」。あまり聞きなれない言葉ですが、一体どのような仕組みなのでしょうか?

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成年後見制度より使い勝手の良い「家族信託」

みなさんこんにちは。
僕のような年齢になってきますと、親の介護について考えないわけにはゆきません。

特に親が認知症になった場合の問題として、例えば介護にかかる費用をどのように負担するのか……もし親自身が保有するお金から支払うとしたら、そもそも判断能力のない親が、果たして自らの介護費用を、サービスの提供者に支払うことが許されるのか……。このような法的な問題や契約上の問題も気になるところです。

案外と知られていないようですが、親が認知症になったことを金融機関に知られた場合、その時点で親の口座は凍結されてしまうので注意が必要です。

また契約などの法律行為を行うことも、できなくなってしまいます。これはどういうことかといいますと、親の口座から現金を引き出して介護施設に支払ったり、介護施設への入所契約を行うこともできないということです。

このような問題への対策として、成年後見制度もありますが、費用の点や手続に要する時間などの点で問題があり、お世辞にも使い勝手の良い制度とはいえません。成年後見制度を使おうとし、結局あきらめてしまった方も多いのではないでしょうか。

そのような方には、(家族)信託の活用も検討していただきたいと思います(家族信託は一般社団法人「家族信託普及協会」の登録商標で、民事信託の一形態です)。家族信託は家族のなかで信頼できる人に、おカネの管理を任せるための仕組みで、高齢期に入った親が、子に資産の管理を委託する場合によく使われます。

認知症の親を持つ子の負担を減らす仕組みとは?
特に認知症対策として信託を使う場合、以下のような構成が定番になります。
委託者:親
受託者:あなた(子)
受益者:親
信託という制度の詳細をこのメルマガ一回でお話しするのは難しいので、ここでは上記のケースについて、骨子だけを説明させていただきます。
1.親の財産の一部あるいは全部を分離し、親が委託者になる信託財産として、その管理を子であるあなたに委託する
 
2.委託を受けたあなたは、親に代わってその資産を管理し、親のために使う。つまり信託財産を受託する
 
3.親は委託した財産から発生する収益や便益を受ける
上記のような委託者・受託者・受益者のあいだで作るしくみが家族信託です。

このような仕組みを事前につくっておけば、仮に親が認知症になったとしても、子である受託者が適切におカネを管理し、かつ運営してゆくことができるわけです。

逆にもし何の対策も行わないまま、親が認知症になり意思能力を失ったとすればどうでしょう。例えば親がアパート経営をしているケースを例に考えてみましょう。

上記のようにその時点で親の口座は凍結されますし、アパートの賃借人との賃貸契約の更新もできません。また、アパートの外装修繕などもできなくなってしまいますので、子であるあなたは大変苦労されることになるでしょう。施設への入所費用を賄うため、アパートを売ろうとしても、買い手との売買契約はできません。

これに対し上記のような信託契約を結んでいたとすればどうでしょう。信託財産として上記のアパートを委託した後は、受託者である子(あなた)は、賃借人とのあいだで賃貸契約を結んだり、万一の場合不動産を売って、親の介護施設への入居費用に充当することもできます。

受託者である子の負う義務は決して軽くはありませんが、それでも対策なしで親が認知症になった場合に比べれば、負担はずいぶん軽くなるでしょう。

親の認知症は子にとっては精神的、肉体的に大きな負担になりますが、少なくとも信託を組成することによって、その何割かは軽減できるのではないかと思います。成年後見制度の活用に二の足を踏まれる方にとっては、少なくことも第二の選択肢になるはずです。

MAG2

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