「コスト」

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4月28日、国連安保理は北朝鮮問題を巡り閣僚級会合を開催し、議長役を務めたアメリカのティラーソン国務長官は、北朝鮮のミサイル・核開発を抑制しなければ「破滅的な結果」を招くと訴えました。

ティラーソン長官は「世界で最も差し迫った安全保障問題に対し、今行動しなければ破滅的な結果を招く恐れがある……ソウルや東京への核攻撃は現実の脅威であり、北朝鮮が米国本土を攻撃できる能力を備えるのも時間の問題」とし、北朝鮮が核やミサイルの開発を続けるなら、すべての選択肢を排除しないと改めて主張しています。

ティラーソン長官は、アメリカは北朝鮮の体制転換は求めず、対話を通じた解決を望むとしながらも、北朝鮮の決議違反に対し、対話で報いるべきではないとしています。つまり、北朝鮮が核及び弾道ミサイル開発を先に止めるなり、相応の行動をすることが前提としている訳です。

それに対し、中国とロシアは対話による解決を優先する立場を主張しています。

中国の王毅外相は「朝鮮半島における核問題の解決は中国の手だけにかかっている訳ではない……今は対話再開を真剣に検討すべきときだ」と訴え、ロシアのガティロフ外務次官は、米韓共同軍事演習や朝鮮半島沖へのアメリカ空母打撃群派遣などにより、北朝鮮は脅かされていると感じていると述べ、武力行使は「絶対に許容できない」との立場を示しています。更に、ロシアと中国は韓国へのTHAAD配備についても反対を表明しました。

要するに、現状を危機の進行と捉えそれに対応、および変更を望むアメリカと、現状維持を求める中露の対立という構図です。

日本は、岸田外相が「この脅威は単なる仮想ではない。一般市民にとっては、まさに現実の脅威だ。……北朝鮮を国際社会の交渉の場に戻すには、挑発的行為には高い代償を伴うとの強いメッセージを送るべきだ」と述べていますから、アメリカ寄りの立場です。

まぁ、対話と圧力、まぁ、手段の違いだといえばそれまでですけれども、大事なのは齎される結果です。これまで六者協議だなんだと散々対話を繰り返してきましたけれども、その結果齎されたものは何かといえば、北朝鮮に核開発を行う時間を与え、東アジアを脅威に晒しました。

ロシアはアメリカの圧力に北朝鮮が脅かされていると感じていると反論していますけれども、それをいうなら、日本はもっと前から脅かされ続けている訳です。

北朝鮮のミサイル発射の報道を受けて、東京メトロが止まったのも正に脅かされている事が可視化された訳ですね。

政府は弾道ミサイル飛来時の具体的な対応について各市町村に提示および広報を始めましたけれども、これまでそれが無かったのが不思議であって、遅すぎるくらいです。

27日、滋賀県の全滋賀教職員組合などが、この政府の対応について、「児童生徒に唐突にミサイル飛来の可能性を伝えればパニックが起こる……政府・内閣官房はこの機を利用し国民を煽っている」とし、文書の回収や保護者への謝罪を求める抗議文を三日月大造知事らに提出したそうですけれども、話になりません。

パニックが起こるから止めろというのであれば、地震や火事による避難訓練もパニックになるから止めるべきだということになります。

ミサイル発射も地震も何時何処に起こるか分からないという意味では同じです。もしものときに備えるのは当然の事であり、それは平和を維持するためのコストだと考えるべきだと思いますね。

善意を前提にした性善説な社会では、確かに社会の平和維持のコストは低く抑えられます。日本はこれまで平和のコストをそれ程意識せずに過ごすことが出来ましたけれども、残念ながら、今の地球ではそれこそが"異常な状態"であったということです。

平和を維持するコストに何が必要で、それを縛っているのが何か、それを日本国民がよく自覚する事こそ、平和に近づく道だと知るべきだと思いますね。

日比野庵

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