「剥がれ始めた翁長知事の化けの皮」

画像の説明
国民を愚弄する沖縄の「英雄」? 剥がれ始めた翁長知事の化けの皮
『篠原章』

宜野湾市長選挙が終わった。沖縄の選挙では、事前運動や戸別訪問など東京などからすると信じられないほどの選挙違反が横行するのが常だが、今回もその例に漏れず、選挙違反のオンパレードだった。両派とも「あちらがやるから、こちらもやる。やらなかったら負ける」という姿勢だから、どうしてもエスカレートしてしまう。

自分たちの行為が違法であるとの認識も薄い。選挙管理委員会や警察にも違反の通報はある。が、多くは対立候補支持者の通報だから、迂闊に動けないという。誰の通報だろうが、選管も警察も動くべきだと思うが、彼らもまた選挙違反に慣れっこになって、動きが鈍いのかもしれない。通常は選挙が終わっても、たいして摘発もない。

お節介はあまりしたくないが、「公正な選挙」という基本的なところから正常化しないと、沖縄の政治風土はいつまでたってもよくならないと思う。どんなに候補者が高潔で優れた能力を備えていたとしても、違法な選挙を闘い、利権を争う政治風土のなかで、やがてその高潔さや能力を失い、政治的駆け引きだけに長けた政治家が生まれてしまう。不幸なことだと思う。

今回の選挙でいちばん驚いたのは、1月20日に放映されたNHK沖縄放送局のニュース番組のなかで、志村恵一郎候補と志村候補を応援する翁長雄志沖縄県知事が、一緒に街頭で選挙運動する様子が映しだされ、カメラの前で堂々と選挙違反の戸別訪問を行っていた一件だ。

NHKの記者やディレクターが、翁長知事らの行為を選挙違反と承知で編集しなかったのか、それとも沖縄ではごく当たり前の光景だから、選挙違反とは思わずに放映したのかは知らないが(おそらく後者だろう)、「日本には民主主義はない」と国連人権理事会(昨年9月21日)で世界に向けて朗々と訴えた翁長知事が、民主主義の基本である選挙を汚している現場を県民に知らしめてしまったのである。

志村陣営の伊波洋一元宜野湾市長は、「街宣活動の途中に知り合いのところに顔を出すことはよくあり、違法なものではないと理解している」とのコメントを出している(1月23日付『産経新聞』)。沖縄ではこれを選挙違反といわないのかもしれないが、少なくとも東京では選挙違反だ。

選挙運動中に知り合いの家を見つけて、玄関先で「よろしく」という行為が選挙違反とされるのは理不尽だ、と言いたいとしても、公職選挙法には「戸別訪問はダメ」と厳しく定められている。規定が気に入らないからといって、法を破っていいことにはならない。

しかも、法を破ったのは、「政府に果敢に闘っている」として注目を集めている翁長知事だ。現代沖縄を象徴する「英雄」が、無自覚に法を破っているとしたら、県民と国民を愚弄するものではないか。

県民や国民を愚弄しているのは今回の一件だけではない。就任して1年を超えた翁長知事だが、いくら公約だからといって「辺野古移設絶対阻止」だけに力を注ぐのは、知事という職務に臨む姿勢として明らかにバランスを欠いている。県のある職員も「知事が辺野古しかやらないから、他の仕事が遅滞して困っている」と不愉快そうにこぼしていた。所得格差、貧困、教育現場の混乱、防災、過疎、DVの横行や青少年の非行…。やるべきことはいくらでもある。基地問題は沖縄県の課題の一つに過ぎない。

翁長知事を支持する知人にそう言ったら、「そんなことはない。辺野古での政府の不正を暴くために、ワシントンやジュネーブに足を運んだのは県民にとって必要なことだ。それに、経済振興・観光振興にも真剣に取り組んでいる。この1年、北京、台湾、香港、シンガポール、そしてハワイを訪問し、トップセールスに努めている」という答えが帰ってきた。

なんと全部海外出張ではないか。調べたら、翁長知事はこの1年間で8回も外遊している。外遊がいけないとは言わないが、就任1年目に「外遊が多すぎる」とメディアから厳しく批判された舛添要一東京都知事も、その回数は6回である。

「アジアと日本の架け橋になる」というスローガンを掲げる沖縄県だから、「アジア各地を廻ることも仕事のうち」と言うかもしれないが、他方で翁長知事は「日本はろくでもない国だ」とあちこち吹聴して歩いている。架け橋もへったくれもないではないか。

そもそも翁長知事は、知事としてもっとも基本的な仕事に真摯に取り組んでいない。それは「防災」である。

昨年9月末、八重山地方に台風21号が襲来して、与那国島で最大瞬間風速81・1メートルを記録したことは記憶に新しい。与那国島では大きな被害が出たが。被災の2日後に副知事を派遣したが、、翁長知事はその後一度も与那国を視察していない。

仲井眞知事時代は、台風で離島に被害が出たら、知事自身が視察していた。翁長知事の対応は、県民、とくに与那国の人たちを愚弄するものだ。人口1600人程度の与那国はたいした「票田」ではないから行かなかったのだろうか。「票にならないことはしない」という翁長知事一流の政治的計算が働いたのかもしれない。

さらに決定的なことを指摘しておこう。あれだけ「辺野古、辺野古」と言い続けている翁長知事だが、知事になってからの翁長氏は一度も辺野古を訪れていない。

翁長氏が辺野古に足を運んだのは、知事選前の2014年9月20日と選挙直後の11月19日の2回だけだ。選挙も終わったから、辺野古で座り込むような泥臭いパフォーマンスより、ジュネーブで英語スピーチするカッコいいパフォーマンスを選んだのだろうか。

おそらくここでも、翁長知事の政治的計算が働いている。翁長知事は夫人を座り込みに行かせたが、どう考えても知事本人が現場で激励するのが筋だ。「翁長知事、頑張れ!」と唱えながら辺野古ゲート前で、日夜座り込んでいる高齢の活動家に対してもあまりに失礼ではないか。辺野古の現場もよく黙っているな、と思う。

これだけ県民や国民を愚弄して平気な知事も珍しいが、多額の経費をかけた勝ち目のない訴訟合戦に時間を割くだけで、政府とまともに交渉しようともしない翁長氏の政治手法からは、容易に想像できる姿勢でもある。化けの皮は、だんだん剥がれ始めている。

コメント


認証コード4747

コメントは管理者の承認後に表示されます。