「目くそ鼻くそ」

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トランプ米大統領の誕生、イギリスのEU離脱など国際情勢が不安定さを増す中、日本の安倍晋三政権が抜群の安定感を示している。

安倍首相は、今やG7(先進7カ国)の中でドイツのメルケル首相に次ぐ“古参”であり、G7を実質的にリードしている。一方、この強力政権を前に苦しんでいるのが野党第1党の民進党だ。反転攻勢のきっかけをつかめない同党内には不穏な動きもあり、水面下で分裂に向けたカウントダウンが始まっているようだ。

「生き延びるには『小池新党』しかない…」

民進党のある中堅議員は昨年末、筆者の前でため息混じりにこうつぶやいた。 蓮舫代表率いる民進党ではもはや生き残れない。代表を替える時間も労力もない。ここは破竹の勢いを維持する東京都の小池百合子知事の国政進出に期待する-というわけだ。

まだ影も形も見えない、国政進出するかもわからない「小池新党」頼みとは安直な願望でしかないが、党勢低迷の深刻さを象徴しているともいえる。

ともあれ、政党の離合集散は永田町の宿命である。昨年3月、維新の党と合流して発足したばかりの民進党だが、安倍政権の前になすすべがない現実が、党分裂へのエネルギーを充満させつつあるのは間違いない。

今夏の都議選で都議会民進党が惨敗すれば「蓮舫おろし」が一気に加速することも十分考えられるが、次期衆院選が今秋との見方が強まる中、党内での権力闘争よりも「離党」を選ぼうとする議員がいてもおかしくはない。

まず、今年最も早く党分裂の危機が訪れるのは夏の都議選直後だ。

7月上旬に予定されている都議選では、小池氏が放った刺客が次々に当選し、都議会で大躍進する可能性が高い。そのあおりを食うのは民進党で、惨敗すれば蓮舫氏の求心力はさらに低下する。党内政局は必至で、前原誠司元外相ら非主流が蓮舫氏ら執行部の責任を厳しく問うことになる。

ポイントは都議選の勝利を受け、小池氏がすぐさま国政進出に舵を切るかどうかだ。仮に国政進出となれば、早急に5人以上の国会議員を集めて新党を旗揚げする必要がある。

次期衆院選が今秋にあるとすれば、都議選後すぐにでも動かなければ間に合わない。小池氏が都知事のまま代表を務める国政政党の旗揚げメンバーは誰になるのか。現職国会議員の離合集散が激しくなるのは容易に想像できる。民進党内から最初のメンバーに加わろうとする議員が出てくるのも目に見えている。

小池氏に近い都庁幹部は今年初め、筆者に「小池新党に与野党から国会議員が次々に集まるだろう」と断言した。

もうひとつのタイミングは、次期衆院選の直前となる今秋である。

民進党は昨年のカジノ法をめぐる党内の迷走に続き、今国会でも「共謀罪」の構成要件を一部変更する組織犯罪処罰法改正案をめぐって、党内の「左右対立」が深まっている。「絶対反対」を叫ぶリベラル系と、一定の理解を示す保守系の根深い溝は今年も決して埋まることはない。政策面の不一致を理由に衆院選目前に党を離れる選択肢は十分あり得る。

それは、過去の事例をみれば明らかだ。平成24年には与党だった民主党から橋下徹氏(当時大阪市長)らが牽引した日本維新の会に、松野頼久元官房副長官ら数人が加わっている。この年の民主党の分裂劇は強烈で、同年7月には小沢一郎氏率いる「国民の生活が第一」に民主党から49人も参画している。

いずれも、消費税増税など政策面での相違を大義名分にして離党している。もちろん、本音は選挙での生き残りを図ることだが。

さて、現在の永田町でも、当時に似たような動きが水面下で起こっているとみていい。民進党の複数の中堅、若手議員は小池氏の側近とひそかに会談を重ねており、国政進出に向けたシミュレーションも行っている。大義名分は「小池氏の改革を支持する」「共謀罪や憲法改正論議で民進党に限界を感じた」などいくらでもひねり出せる。

あくまで党外を見渡したときに「小池新党」という“器”があることが前提の仮説でしかないが、議席を是が非でも維持したい議員たちが、沈みゆく民進党にいつまでもとどまっている保証はない。

自由党の小沢一郎代表の動きも要注意だろう。小沢氏はいずれは民進党に合流し、「野党再々編」を狙っているとの見方は絶えないが、民進党が共産党との連携に後ろ向きの状態が続けば、小沢氏が民進党内に手を伸ばして分断することは容易に想像できる。共産党に強い影響力を持つ小沢氏が、共産党との共闘に積極的な民進党議員と連携することは十分あり得るわけだ。

「大阪の地域政党」から抜け出せない日本維新の会も、民進党分裂の間接的な要因になる。維新は民進党批判に熱心だが、自民党に急接近しつつも、野党として次期衆院選に臨む姿勢に変化はない。

実は、橋下徹大阪市長が次期衆院選で政界復帰し、衆院選に出馬するとの憶測が絶えない。橋下氏抜きの維新が思うように党勢を拡大できない現状が橋下氏待望論を強めているのだ。橋下氏が政界復帰、国政進出を果たせば、民進党からまたもや離党者が出るのは確実だろう。

内部事情をよく知る維新関係者は今月中旬、小池氏と橋下氏の連携にも期待を示した。維新は小池氏との連携に否定的だが、橋下氏はツイッターで小池氏を絶賛することがある。

小池、橋下の両氏がタッグを組めば、野党の勢力図が一変することになるが、維新は現時点で小池氏との連携に否定的で、橋下氏の政界復帰についても確たる証拠はない。

最後に、民進党内の現状勢力は以下の通りに分類できる。複数のグループに所属することが許されている民進党ならではの「群雄割拠」状態であることがよくわかる。

(1)~(8)はいずれも10~20人程度、(9)、(10)は5人程度とみていい。衆参147人(衆参副議長含む)を擁する野党第1党の分裂劇に向けた水面下の動きから目が離せない。
 (1)野田佳彦幹事長のグループ「花斉会」(蓮舫代表が所属)
 (2)前原誠司元外相のグループ「凌雲会」
 (3)細野豪志代表代行がトップの派閥「自誓会」
 (4)旧維新系グループ(松野頼久元官房副長官に近い議員ら)
 (5)旧維新系グループ(江田憲司代表代行に近い議員ら)
 (6)赤松広隆前衆院福議長のグループ「サンクチュアリ」
 (7)旧民社党系グループ
 (8)大畠章宏元国交相らのグループ「素交会」(そこうかい)
 (9)長島昭久元防衛副大臣のグループ
 (10)自由党の小沢一郎氏に近いグループ

産経

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