「暴落」

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厳しい経済危機に見舞われているモンゴルでは、通貨ツグリクの下落に歯止めが掛からない。

パニックを起こしたモンゴル市民はブラックマーケットの米ドルや人民元に殺到、外貨不足が日に日に深刻化している。

両替商のガンボルドさんは「ドルはもうないよ」と話す。ガンボルドさんは1990年のコミュニズム崩壊以来、両替商を営んでいるが、これまでは外貨が足りなくなると、仲間内で融通できていたという。

それが今では、ドルが海外から届くまでは、店を閉めるしかない。
モンゴルは、海外からの投資急減、持続不可能な拡張的財政政策、石炭や銅などコモディティーへの需要減退を受け、苦境に陥っている。

中銀は先週、通貨安に対応すべく、政策金利を450ベーシスポイント(bp)引き上げて過去最高の15%とした。ツグリクは8月初めから対ドルで9%下落し、下落率は世界の通貨の中でも突出している。

ドル供給が細るなかで、商業銀行は通貨取引を厳しく制限。ガンボルドさんによると、ある銀行はドルとの交換を拒否しているという。

チョイジルスレン財務相は今月、中銀の外貨準備残高は13億ドル、と述べた。ただし、中国との150億元の通貨スワップ協定を勘案しなければ、外貨準備は4600万ドルのマイナスとの見方を示した。

国際通貨基金(IMF)は先週、モンゴルを訪問し、政府関係者と面会した。ただ、一部のアナリストは、モンゴルはIMFではなく、中国との通貨スワップ協定拡充に救いを求めることになると見ている。

BD証券(ウランバートル)のニック・クーシュン最高執行責任者(COO)は「中国が域内に持つ影響力を生かして、IMFよりも大規模、かつより良い救済策を申し出る可能性が高い」と話す。「モンゴルは天然資源が豊富で、ロシアとの経済コリドーとしての潜在性を持つ。中国にとっては、戦略的に重要な意味がある」との見方を示している。

<外貨求め闇市場に殺到>

債務を削減し、海外投資家を呼び戻すと約束しているモンゴル政府は、給与の削減や学生向けの援助停止などの財政緊縮策を導入した。

2016年上期の経済成長率は1.4%に鈍化。鉱業ブームに沸く2011年に記録した過去最高の17.3%成長は今や見る影もない。

商業銀行が1日当たりの交換可能額を制限するなかで、一段のツグリク相場下落を心配する多くのモンゴル市民は、預金を一刻も早くドルに換えようと、公定レートよりも有利なブラックマーケットに殺到している。なかでも、息子や娘が海外に留学している家庭で問題は深刻だ。

ある女性はロイターに対して「息子があす、米国の大学に出発する。でも、ドルはとても高く、私たちにとって厳しい」と話した。

23日朝現在、ブラックマーケットのレートは1ドル=2247─2250ツグリク付近。公式レートは2260ツグリクとなっている。公式レートは18日、史上最安値の2265.28ツグリクをつけた。

モンゴル中銀のバヤルサイハン総裁は19日、地元メディアに対して、今年第1・四半期に総額235億ドルとなった対外債務の条件について再交渉することから、今後2年間は厳しい状況が続く、と述べた。

総裁は、ドル上昇は「人為的」であり、いずれ反転すると主張。「今の相場に惑わされてパニックを起こすことのないように」訴えた。

ロイター

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