「ホテル?」

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亡くなった人を葬儀や火葬まで預かるサービスが広がっている。「遺体ホテル」との呼び名も。背筋がゾクッとしそうだが、時代のニーズを映した施設だとか。どんなものなのか?

「ご遺体ホテル 質素ながら自由にお別れができる施設です」

川崎市中原区の「ビジテーションホームそうそう」はウェブサイトにそう掲げる。住宅街の3階建て工場を改装し、遺体を安置するサービスを2014年10月に始めた。

外観は地味な青とグレー。1階に9室ある10~12畳の部屋には、棺(ひつぎ)を置く台や、テーブルがあった。昼夜を問わず故人と面会でき、飲食物の持ち込みも可能だ。利用料は24時間9千円。ソファで夜を明かすこともできる。

葬儀会社の社員だった竹岸久雄社長(41)は、遺体の置き場が葬儀場や火葬場の霊安室ぐらいしかないことに疑問を感じていた。その多くが、業務用の大型冷蔵庫を使っているという。「都会では家が狭くて遺体を連れて帰れない、近所に知られたくないという人もいるし、冷蔵庫での保管に抵抗を感じる人もいる。遺族が故人とくつろげる自宅の一室のような場所を提供したい」と話す。

葬儀会社ニチリョク(東京)が横浜市に2店舗展開する「ラステル」は英語のlast(ラスト)(最後の)とホテルを組み合わせた造語だ。家族葬が中心の葬儀場だが、安置している故人に24時間いつでも会える「面会室」を備える

その一つ、JR新横浜駅近くの「ラステル新横浜」の安置室は最多で20人の遺体を収容する。面会の際には隣の面会室の壁の一部が開き、電動で棺を運ぶ。「亡くなった後も会いたい。それが家族の気持ちです」と横田直彦支配人(52)。売り上げは毎年、前年比で約1割伸びているという。

葬儀業者によると、遺体安置をビジネス展開する施設は東京都江東区や大阪市にもあり、千葉県や長野県でも開設の動きがある。開業には原則として行政の許認可が不要で、霊柩(れいきゅう)車の派遣会社やコンテナメーカーなど様々な業種が参入している。

なぜ、都市部に多いのか。

住宅事情と並ぶ大きな理由が、火葬待ちの「行列」だ。人口約150万の川崎市に公営火葬場は二つしかなく、数日待ちが常態化している。多くの人が亡くなる冬場は、東京では1週間近く待つこともあるという。火葬場の新設には住民の反対が根強く、この状態はすぐに解消されそうにない。
 また、葬儀場などで通夜や葬儀をせず病院などから直接火葬場へ送る「直葬(ちょくそう)」の増加も、遺体保管ニーズの高まりの背景にある。

ただ、遺体ホテルの新設は住民の反発を招くことも。住宅街にある「そうそう」には開業前、「気持ち悪い」「子どもの教育に悪い」といった反対の声が殺到。川崎市は15年4月、遺体保管施設や葬祭場の開設に先立ち、近隣住民への説明などを業者側に求めるルール(要綱)を施行した。

同様のルールは、東京都大田区、新宿区、千葉市などが制定している。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、15年に131万人だった死亡者数は39年にピークの約166万人に達する。超高齢化による「多死社会」が迫り、遺体保管は誰もが直面する問題になりつつある。

供養・仏事関係の市場調査を行う鎌倉新書(東京)の増沢貞昌さん(43)は「死者が増え続けるなか、どこかで折り合いをつけないといけない。消費者には遺体を預けている間に、複数の葬儀業者の見積もりを比べられるメリットもある。身近な人が亡くなる機会が増えるほど、社会の理解も進んでいくのでは」と話す。

報道から

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