2018年11月1日よりタイトルをWCA(世界の時事)に変更しました。
「「二重国籍」、何が問題なのか」」
民進党代表選挙に出馬する蓮舫氏が「二重国籍」ではないか、という疑惑が持ち上がった去年9月まで、私たち日本人にとって「二重国籍」という言葉はなじみの薄いものだったはずです。
私自身「二重国籍」についてよく分かっていませんでした。しかしその後、蓮舫が口を開くたびに発言が二転三転し、記者会見で「戸籍を開示するべきではないのか?」という度重なる質問をあーだ、こーだと言ってはぐらかす様子を見て、多くの人がこの問題の重要性に気づいたのです。そういう意味では日本人は蓮舫氏に感謝しなければならないかも知れません。
テレビや新聞、週刊誌ですらなぜかこの問題に沈黙を保つ一方でネットの世界ではすごいスピードで情報が拡散されていきました。蓮舫が「台湾籍の離脱を17歳の時にした」と発言すると、その夜には台湾の国籍法では20歳まで離脱できないことがネットで明らかにされました。
中華民国の官報はネット上で公開されているので、外部の人でも調べることができます。蓮舫が記者会見で言っていることは実はことごとく嘘だったと分かるのにさほど時間はかかりませんでした。やはりネットの情報拡散力は凄い、ということがまた証明されました。
インターネットの言論プラットフォーム「アゴラ」で、この問題を最初に提起した八幡和郎さんの書かれた『蓮舫「二重国籍」のデタラメ』(飛鳥新社・1,111円)を読みました。
八幡さんは元通商産業省の官僚で2年間、フランスで暮らした経験がおありです。息子さんはパリ生まれだそうです。その経験が八幡さんがこの問題に気づく背景にあったということが、この本を読むとよく分かります。
ヨーロッパでは二重国籍や多重国籍の人がたくさんいて、帰化人の政治家もたくさんいるそうです。
帰化して政治家になった人はみなフランスという国家に対する忠誠や、フランス文化に対する愛着をつとめて熱く語るそうです。
2014年にフランス首相となったマニュエル・ヴァルス氏は自分を首相にしてくれたフランスへの感謝を常に語るそうです。では、蓮舫は自分を政治家にしてくれた日本への感謝を口にしているのでしょうか?
八幡さんはこの本の中で「一般人の二重国籍」と「政治家の二重国籍」を分けて論評しています。
問題なのは政治家としての倫理観であって、法的に罪に問われないから問題ない、ということではありません。政治家とは常に国益を背負って仕事をするのですから国籍=自分がどこの国に帰属しているか、が問われるのは当然のことです。
これからは有権者にも政治家に国家観や倫理観、歴史認識などを求める意識が必要です。「ハーフって格好いい!」というのはタレントに対する時にはOKですが、政治家が国籍を明確にしない態度に対しては断固として「NO!」と言わねばなりません。
国境や国家の壁を低くすることが平和につながる、という理想(というか妄想)はイギリスのEU離脱やトランプ大統領の出現によって修正を迫られています。かつてヨーロッパではいくつ国籍を持っていてもとがめられない時代があったそうですが、「難民や移民の増加」、「テロ」、「租税回避」という問題が深刻なので、今は国籍に関して厳格化の流れになっています。
ヨーロッパの混乱は他人事ではありません。わが国でもこれから移民や難民を受け入れようという動きがあります。移民を受け入れる云々の前に、まず国会議員や公務員の二重国籍をどう規制するか、と決めるべきではないでしょうか?
「国籍なんてどうでもいいんじゃないの?」「グローバル時代なんだから、そんなことにこだわるのはおかしい」と思っている人に是非、読んでほしい一冊です