「健康維持」

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健診の「×印」は体重5%分のダイエットで挽回できる
岡田明子 [管理栄養士]

結果に一喜一憂する健診ですが、各項目の数値がどのような生活習慣に関係するのか知っていますか?

事業者では必ず行われる「健康診断」。労働安全衛生法によりあらゆる規模の会社が対象となりますが、実施時期や回数は決められていません。とはいえ年に一度、定期健康診断を受けるという人も多いでしょう。結果が手元に届き、数値が悪かったり再検査と記載されていても、「今は自覚症状がないからまぁいいか…」とそのままにしている人もいるのではないのでしょうか?

そこで今回は、健康診断の結果を簡単に読み解くポイントや数値改善につながる食事の実践方法をお伝えいたします。

以下に健康診断の主な項目毎に診断結果の見るべきポイントや数値が標準よりも高値だった場合の生活習慣の問題点、食事改善ポイントをまとめます。

●身体計測
主な計測内容は、身長、体重、腹囲です。ここで見てほしい項目はBMIです。BMIとは肥満度を表す指標として用いられている体格指数で、25以上が肥満と判定されます。「体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))」で計算することができます。ここで肥満判定の度合いが大きい人ほど、糖尿病や心臓病などの生活習慣病の発症率が高くなるので、数値が25以上の方はまず体重を落とすことを目標にしていきましょう。

肥満を招く生活習慣は、食べ過ぎ、運動不足、不規則な食習慣が挙げられます。

一方で、BMIは数値が小さい程よいというものではなく18.5以下の痩せ型に分類される人は肺炎などの感染症の発症率が高くなってしまいます。健康維持のためには標準値の18.5~25にすることが大切ですので、痩せ型と判定された人は食習慣を見直し、まずはしっかり栄養を摂る事から始めていきましょう。

BMI値が基準値から外れていた人は、カロリーを把握しコントロールすることと、バランスの良い食事を意識しましょう。

食事記録をつけることで自身の食べている物や時間を把握し体重コントロールに役立てることができます。そして、カロリーをコントロールするには、普段の食事から主食のご飯やパン、麺類、油っこいもの、甘い物、アルコールなどを減らしましょう。さらに、主食(ご飯、麺類など)、主菜(魚、肉など)、副菜(野菜、きのこ、海藻類など)を用意したバランスの良い食事を心掛け、BMIを基準値に戻していきましょう。

GOT(AST)、GPT(ALT)、ALPとは?

●血圧
高血圧治療ガイドライン2014(日本高血圧学会)によると、診察室で測定した血圧が140/90mmHg以上、家庭で測定した血圧が135/85mmHg以上だと高血圧となります(年齢や持病により、高血圧の数値は異なります)。

血圧が高い場合は、脳血管障害や心疾患につながる動脈硬化が発症しやすいので注意が必要です。塩分の摂り過ぎ、肥満、野菜不足など偏った食生活、運動不足になっていないかなど一度生活習慣を見直してみましょう。低血圧の場合は、自律神経の乱れや薬の副作用などが原因として考えられます。

食事による改善の方法を二つご紹介します。

一つ目は塩分の摂取量を減らす、減塩です。日本人の食事摂取基準(厚生労働省、2015年版)によると、食塩の摂取目標値は、男性1日8g未満、女性7g未満となっています。血圧が高い方は、この基準値よりも少ない塩分量として、男女ともに1日6g未満を目標に減塩を意識していきましょう。醤油はかけずにつけて食べる、ラーメンの汁は残す、加工食品はなるべく食べないなど普段の食習慣でできるところから減塩を始めていきましょう。

コンビニ食や加工食品をよく利用する方は成分表示をよく見て選ぶことも大切です。食品表示に食塩(g)ではなくナトリウム(mg)と表示してある場合は、食塩1g=ナトリウム約400mgと換算して計算しましょう。
 もう一つの食事改善ポイントは、塩分の排出です。カリウムを多く含む野菜を摂取することでナトリウム(塩分)の排出を促してくれます。毎食1~2皿は野菜を食べる習慣をつけていきましょう。

●肝機能
GOT(AST)、GPT(ALT)、ALPは、肝機能の異常を判定する数値です。γ‐GTPは、過度の飲酒や油っこいものを食べ過ぎている人は数値が高くなる傾向にあります。

肝臓は「沈黙の臓器」といわれており、数値が異常であってもなかなか自覚症状が出ません。自覚症状が出た時はかなり悪い状態なので、数値異常と診断されたら早めに受診することが大切です。

暴飲暴食、肥満は肝機能を低下させます。また、薬剤の摂取やストレスも影響します。

ここでもバランスの良い食事がポイントになりますし、それに加えてお酒は適量を守りましょう。

お酒の「適量」とは、1日あたり20gのアルコール量に相当します。アルコール量の計算方法は、以下になります。

アルコール量(g)=アルコールの度数(%)÷100×飲む量(ml)×0.8
ビールであれば500ml、日本酒は1合、焼酎は0.5合が適量の範囲になります。付き合いなどでお酒の量が減らせない方は休肝日を設けて肝臓を労わりましょう。

●血糖値
空腹時血糖とHbA1cの数値を見ましょう。空腹時血糖は前回の食事から10時間以上絶食した状態で計測するものなので、健診前に何か食べていると高い数値が出てしまいます。HbA1cは過去1~2か月間の平均血糖値の状態を把握でき食事の影響を受けません。つまりこの数値が高い場合は糖尿病の疑いがあります。

血糖値が基準よりも高値になる人は、肥満、食べ過ぎ、糖質の過剰摂取(主食、お菓子、清涼飲料水など)、野菜不足といった生活習慣が考えられます。

血糖値だけでなく身体測定で肥満度が高い人は、まずはBMIを標準値にすることを目標に「身体測定」で紹介した食事の改善を実施しましょう。

さらに、食物繊維が多く、糖質の少ない食品を積極的に摂りましょう。ご飯を食べるなら胚芽米や玄米など精製度の低いものを食べ、野菜、海藻類、きのこを毎食摂り入れましょう。

食べる順番も意識したいところです。食物繊維を多く含む野菜やきのこ、海藻類を最初に食べ、糖質を多く含むご飯やパンなどの炭水化物は一番最後に摂ることで血糖値の上昇を抑えることができます。また、ゆっくりよく噛んで食べることも忘れずに。

●コレステロール
コレステロールは、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロールがありますが、総コレステロールだけで判断せず、LDLコレステロールとHDLコレステロールの状態を見ることが大切です。

LDLコレステロールは悪玉コレステロールとも呼ばれ、血管の壁にコレステロールを溜め、動脈硬化を引き起こすので数値が高い場合は注意が必要です。肥満、食べ過ぎ、魚や野菜の摂取不足に心当たりがあるのではないでしょうか。

逆にHDLコレステロールは、善玉コレステロールと呼ばれ、コレステロールを回収して肝臓へと戻す働きがあるため数値が低いとよくありません。

コレステロールを基準値に近づけるためには、ここでもカロリーコントロールが大切です。肉は脂肪の少ないものを選び、バターやラードなどの動物性脂肪を多く含むものは控えカロリーをコントロールしていきましょう。

そして、野菜、海藻、きのこなどの食物繊維を多く含む食品と、サバやサンマ、アジなどの青背の魚を積極的に摂りましょう。
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●中性脂肪
中性脂肪が高いと、LDLコレステロールを増やし、HDLコレステロールの働きを弱めるため、動脈硬化の要因になります。エネルギーとして使われなかった脂肪が体内に蓄えられると中性脂肪の数値も高くなります。

肥満、油の摂り過ぎ、砂糖や果糖(果物)の摂り過ぎや夕食が遅いという人は注意が必要です。

肥満の場合、中性脂肪が上昇しやすいため、BMIを標準値にすることで数値も改善します。身体測定で肥満度が高い人はまずはBMIを標準値にすることを目標に、ここでも「身体測定」で紹介した食事の改善を実施しましょう。

また、脂肪というと肉の脂を想像しがちですが、砂糖や果物などの糖質も中性脂肪を上昇させる要因です。お菓子、果物などの摂取量を一度見直してみましょう。

●腎臓
ここでは尿蛋白と尿酸、血清クレアチニン(Cr)の数値を見ましょう。腎臓は肝臓と同様に、多少数値が悪くても自覚症状なく放置してしまう場合が多いのですが、自覚症状が出た時は既にかなり進行しているケースが多いのです。検査数値が悪い場合は早めに受診しましょう。また腎機能の低下により尿酸の数値が高くなったり、尿蛋白が陽性になる場合もあります。

腎臓機能の低下は、肥満、食べ過ぎ、アルコールの過剰摂取、ストレスや薬の副作用といった生活習慣によって引き起こされることがあります。

ここでも肥満の場合、尿酸値が上昇しやすくなります。ですので身体測定で肥満度が高い人は、まずはBMIを標準値にすることを目標に「身体測定」の食事改善を実施しましょう。

また、肉や魚などのタンパク質の過剰摂取は腎臓に負担をかけるため控え、血圧の食事改善で紹介した減塩も心がけましょう。

アルコールをよく飲む人は、肝機能で紹介したお酒の適量や休肝日を設ける習慣を取り入れてください。

健康診断の数値は、現在の体重の5%の体重を落とすことで数値が改善されると言われています。例えば現在体重が80kgの方であればまずは4kg減を目標とすればよいのです。肥満と判定された方は、まず体重の減量を目標にして、次回の健康診断に備えて食習慣を見直していきましょう。

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