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画像の説明 OPEC(石油輸出機構)が11月30日の総会でようやく減産合意にいたった。

来年1月から日量120万バーレル減産して日量3,250万バーレルにすることを発表した。この決定を受けて石油価格(北海ブレント)は1割ほど上昇して50ドル台に上昇した。それでも1年前から比べれば半分の水準である。

今回の合意の特徴は何だろうか。ひとつは原油価格の持ち直しが小幅であることに窺われるように市場の反応が冷淡であるということだ。

OPECが目標としているとみられる70~80ドルを目指すほどの突破力に乏しいことだ。これは減産協定の遵守に市場が疑いを持っているということに他ならない。

経済復興需要の旺盛なイランは日量400万バーレルと過去最高水準の生産量を譲らずにきて、最後は380万バーレル弱でサウジと折り合った。しかし、このイランに加えて、いまや米国、サウジを抜く世界一の産油国となったロシアがOPECに協力して日量30万バーレルの減産協力を誓ったが、果たして約束を守り続けるのだろうか。

仮に湾岸産油国、イラン、ロシアといった大産油国が減産枠を守ったとしても、サウジも増産を黙認せざるを得なかったOPECメンバーのナイジェリア、ベネズエラのほか、ブラジル、カザフスタンなど財政事情の窮迫化している国が増産に向かう可能性は高い。

需要面では中国の最終需要の伸びが17年以降大きく鈍化する見通しであるうえ、米国のガソリン需要も価格上昇に敏感であるだけにスローダウンしかねないことだ。

米国のガソリン消費は拡大を続けた。これは2014年から2年間、ほぼ一貫して石油価格下落が続いたことが、折からの景気回復と相まって、SUVピックアップトラックなど大型車への移行を促してきたためだ。

しかし、最近2か月間、小売価格は4年ぶりに上昇に転じている。17年のガソリン消費がOPECの想定するほど好調であるというのは疑わしい。さらに世界経済の低迷が長期化している中で、消費量の1年超とも言われる世界的な原油過剰在庫の存在も価格下落圧力を生みやすい。

さらに重要なのは、米国のシェールオイルの増産だ。掘削技術の飛躍的進歩により、サウジの狙った原油市況を大幅に引き下げて、シェールオイルの採算を悪化させて彼らを駆逐してしまおう、という戦略はこの二年間のシェールオイルの生産量維持をみると、大きく外れてしまったという以外にない。

サウジの「本気度」も問題である。過去の歴史を見てもOPEC減産協定が有効であったのはサウジというスィング・プロデューサー(需給調節弁)が厳然と存在してたからだ。

つまり、サウジが石油消費の落ち込みや在庫の取り崩しで最終需要が落ち込んだ場合、数百万バーレル規模の減産を実施して減産カルテルを守り抜いたためである。

今や、サウジは経済的にも政治的にもスィング・プロデューサーの役割を果たす余裕はない。

経済的にはバーレル当たり100ドルを超えていた原油価格が30ドルまで大幅低下する中で、実質成長率が1%台に落ち込み、今年の財政赤字もGDP比13.5%と巨額になっている。大幅減産に耐える経済的体力はない。

サウジの国政を実質的に掌握しているムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(通称MbS)はビジョン2030を公表してサウジへの投資を懸命に呼びかけ、アラムコの新規株式上場(IPO)まで発表した。

原油依存体質が改まらず、経済の改革におくれた危機感の表れともいえる。大幅減産を通じてこれ以上の財政危機を招けば、補助金削減やVAT導入計画に憤る大衆の反発をあおる結果となる。また対外政治面でも、シリア内乱、イエメン戦争で敵対するイランの増産余地を与えるような大幅減産は取りえない選択である。

以上みてきたように、OPECの減産は有効性に疑問符が付き、原油価格の30ドル台の下落に歯止めをかけた程度のものである。仮に足並みが乱れれば原油価格は再び下落基調をたどろう。

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