「採算悪化」

画像の説明 船余り深刻、 海運3社、コンテナ船事業統合

海運業界の「船余り」不況が深刻さを増している。収益改善のめどが立たない国内大手3社は、主力の「コンテナ船事業」の統合を決めた。だが、別の収益の柱である鉄鉱石など資源運搬の「ばら積み船事業」も苦しく、当面は厳しい経営が続きそうだ。

■再編、海外で相次ぐ

コンテナ船事業を統合するのは、日本郵船、商船三井、川崎汽船。各社の社長は31日にそろって記者会見し、商船三井の池田潤一郎社長は「世界貿易の根幹、インフラとしての使命に応えていくことが、大変厳しい環境になってきた」と述べ、統合への理解を求めた。

来年7月に共同出資会社をつくり、3社がそれぞれコンテナ船事業をそこに移す。2018年4月から事業を始める。

日用品を運ぶコンテナ船事業は各社の売上高の3~5割を占める主力。それを切り離すのは「船余り」の解消のめどが立たないからだ。数年前の海運好況時に船を発注しすぎた影響で、荷物の量に比べて船が多すぎる状態が続き、運賃のたたき合いになっている。

川崎汽船によると、リーマン・ショック前の08年4~6月の運賃水準に比べて、北米行きで3割弱、欧州行きで5割超も下落。3社の16年9月中間決算では、全社がコンテナ船事業で赤字を出した。

海外では大手同士の再編も相次ぐ。規模拡大で経営効率を上げようという戦略だ。今回の大手3社の事業統合もこうした流れにある。3社は設備の共有などで年間計1100億円の利益改善を果たせるとみる。

これら大手3社は今年5月には、海外大手も含む計6社で提携し、来春から共同運航などを始めるとも発表していた。だが、その計画に加わった韓国の大手「韓進(ハンジン)海運」が8月に経営破綻(はたん)。対応を急ぐきっかけになったとみられる。

■ばら積み船も需要低迷

ただ、事業統合で苦境を抜け出せるわけではない。3社の統合会社の年間売上高は2兆円を超す見通しだが、それでも世界シェアは約7%で、16%ある最大手APモラー・マースク(デンマーク)との差は大きい。

荷物の量が想定ほど伸びなかった理由は、世界経済の停滞だ。中国の成長が鈍り、英国の欧州連合(EU)離脱問題で欧州経済の先行きも不安視されている。

このため、海運需要の低迷は鉄鉱石や石炭などを運ぶばら積み船も同様だ。運賃水準はリーマン・ショック前の1割以下にまで落ち込んでいる。

日本の大手3社にとって、ばら積み船はコンテナ船と並ぶ収益の柱。売上高の約2割を占めるとされる。定期便のコンテナ船と異なり、注文のたびに運ぶチャーター便のため、他社との提携は難しい。「市況回復を待つしかない」(日本郵船)のが現状だ。

3社は31日にそれぞれ17年3月期の業績予想を下方修正。日本郵船と川崎汽船はそれぞれ戦後最悪の純損失を見込む。

商船三井は本業のもうけを示す営業損益が150億円の赤字となりそうだ。今後3社が注力するのは、LNG(液化天然ガス)運搬船や自動車専用船だ。

船員に求められる技能が高度で運賃競争が起きにくいという。

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