「不透明」

画像の説明 ロシア経済協力に邦銀が融資つけず 領土問題が停滞も

安倍首相が最重要案件に掲げるロシアへの経済協力プランに対し、邦銀が融資できないとして暗礁に乗り上げようとしている。

経済協力は、北方領土の返還交渉の地ならし策と位置づけされる施策であるだけに、停滞すれば領土交渉への影響は避けられない。

11月のペルーのリマ、12月の山口県での日ロ首脳会談を控え、日本政府は世耕弘成経済産業相(ロシア経済分野協力担当相)を中心に経済協力の具体策作りに精力を傾けている。しかし、日本の経済界の反応は必ずしも芳しくない。

特に、経産省が具体的なプロジェクトへの入札を企業に働きかけているが、「融資がつかないので応じられない」としり込みするケースがでている。

このため官邸が金融庁など金融監督当局を通じて邦銀へ融資枠を供与するよう「要請」をしているが、メガ3行を中心に邦銀側に応じる気配はない。金融庁幹部が各行に何度も働きかけているが、邦銀側はスクラムを組むようにガードを固めている。

日本政府をあげての説得に邦銀が応じない背景には、米国の影がちらつく。邦銀の国際金融関係者はロシアへの経済協力は「ロシアへの経済制裁をリードしてきた米国のトラの尾を踏みかねない」との懸念を打ち明ける。

米国は自国の安全保障を脅かす国との金融取引を幅広く制限している。ロシアへの協力はこの規制に抵触しかねない。

実際、米国の金融制裁の対象となっていたイランとの決済取引で三菱東京UFJ銀行は、2013年にニューヨーク州金融サービス局に2億5000万ドル(約245億円)もの和解金を支払っている。

この取引に関しては虚偽報告が指摘され、2014年末にさらに同州に対し、3億1500万ドル(約370億円)を支払らわされている。

こうした制裁は、邦銀にとどまらず、英スタンダード・チャータード銀行がやはりイランとの取引で6億ドルを超える罰金を支払っている。罰金額は年々、高額化している。

邦銀各行は弁護士などを通じて米当局と内々に接触している模様だが、容認姿勢を得られなかったようだ。邦銀関係者は罰金では済まず「米国からの撤退を命じられるリスクもある」と声を落として話す。

米国の金融当局の反応は、単に法律の適用に厳格なだけとは思えない対応という。米国政権が安倍政権の対ロ接近に不快感をかもし出していることの反映にみえるという。

これまでのところ、米国務省の報道官など表向きは日ロ交渉に不快感などは表明されていない。

しかし、非公式ルートでは外務省にけん制球が投げ込まれており、だんだんにトーンが厳しくなってきているというのが実情だ。

北方領土の返還交渉はやっと入り口に立ったところと言われ、12月の首脳会談からさらに2年はかかるとみられる。

領土問題に先行して経済協力を実現し、地ならしをするというのが安倍外交の基本戦略。それだけに、経済協力の停滞は、領土交渉そのものの難航を生みかねないと交渉関係者の間では警戒感が広がっている。

コメント


認証コード9506

コメントは管理者の承認後に表示されます。