「ドイツ銀行」

画像の説明 今年のドイツ銀行(DBKGn.DE)の姿は、2010年のロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)(RBS.L)を思い起こさせる。

ドイツ銀は、住宅ローン担保証券(MBS)の不正販売をめぐり米司法省から制裁金を求められていることへの懸念を背景とした株価下落はひとまず食い止めた。

だが上半期に計上した20%という減収の規模は、RBSが6年前に見舞われた業績悪化に良く似ている。RBSの場合は、その後企業価値がほぼなくなる事態にまで転落の一途をたどった。

ドイツ銀のジョン・クライアン最高経営責任者(CEO)には、RBSの当時のスティーブン・ヘスターCEOより有利な点がいくつかある。

ドイツ銀の方がホールセール事業は強固だし、国内市場も大きい。国営でないドイツ銀は経営の制約がより少なく、人員削減数を2倍の1万9000人に拡大することなど現在検討されている対策が、最終的に利益を押し上げる可能性もある。

クライアン氏は、増資で獲得した資金を経営立て直しに役立つ投資に回すことができるだろう。

リテールと訴訟問題を脇に置けば、いくつかの基調的な事業に潜在的な力があることを示す材料はある。複数の幹部は、米司法省への制裁金問題を懸念した富裕層向け資産管理部門からの資金流出は、それほど大きくないと話す。

企業合併・買収(M&A)関連の収入は着実に上向いている。また米規制当局が新たな規制を導入するリスクをヘッジしたいと顧客が考えていることが、欧州で傑出した投資銀行としてのドイツ銀にとって追い風になってもおかしくない。

しかしドイツ銀が進めるリストラが、今抱えている問題を悪化させるだろう。

上半期は、ポストバンク売却要因を除く収入の3分の1強を占めるトレーディングの落ち込みが他の部門よりも大きくなった。

コアリションのデータによると市場シェアは大幅に低下しており、これが一層不安を助長している。株式の引き受けとデリバティブ・トレーディングは打撃を受け続け、いくつかのヘッジファンドが預金を引き揚げたため今後はいわゆる「プライムブローカレッジ」事業も低迷するとみられる。

また、クライアン氏は、すぐには市場シェアを回復できない。1つのネックは経費節減のための採用凍結で、もう1つは同じ理由から賞与額が抑えられてより多くの幹部が退社してしまう可能性だ。

ドイツ銀にとってはこれから数四半期がのるかそるかの局面と言える。同行にとって特に重要な金利商品を取り巻く環境の先行きが7─9月に業界全般として明るくなったことは、プラス材料だったかもしれない。

これによりマッコーリーのアナリストチームは、ドイツ銀の予想1株利益をバークレイズ(BARC.L)以外のすべての銀行よりも大幅に上方修正した。とはいえ、ドイツ銀の株主にとって心配なのは、RBSが身をもってはっきり証明したように、いったん下向きの力が働き始めればそれを止めるのは難しいという点にある。

コメント


認証コード3679

コメントは管理者の承認後に表示されます。