「決め事」

画像の説明今年の秋夕(チュソク・旧盆)用の贈答品では、金英蘭(キムヨンラン)法を意識して、ハムやソーセージを使った比較的安価なセットも登場した

韓国で28日、公務員や記者らに対して3万ウォン(約2800円)を超える食事接待などを禁じる新法が施行される。「接待文化を変える台風」(韓国紙大手、朝鮮日報)の上陸に、400万人とも言われる対象者や飲食店などは戦々恐々としている。

新法は「不正請託及び金品授受の禁止関係法」。推進した政府組織、国民権益委員会の当時の委員長の名前を取り、「金英蘭(キムヨンラン)法」とも呼ばれる。同委は腐敗防止を主な目的に2008年にできた首相直属機関だ。

公職者や報道関係者、私立学校職員らが対象。理由が何であれ、年間に計300万ウォン(約28万円)、1回に100万ウォンを超える金品を本人か配偶者が受け取った場合、刑事処罰の対象になり、最大で3年以下の懲役か3千万ウォン以下の罰金が科せられる。

ログイン前の続きまた、会食は3万ウォン、贈り物は5万ウォン、慶弔費は10万ウォンという上限もそれぞれ設けられた。違反すれば、罰金を支払うほか、所属機関の懲戒対象にもなる。

韓国経済研究院が5月に発表した資料によれば、接待と思われる支出額は、15年に飲食店で30・32兆ウォン、ゴルフ場が2・32兆ウォン、贈り物が11兆ウォンと、国内全体で4兆円超に上る。

1人あたりの平均飲食費は、韓国料理店4万3900ウォン、日本料理店6万9千ウォン、ゴルフのラウンド1回が30万ウォン前後。従来の接待のほとんどが違法になってしまう。

さらに、関係者がおびえるのが、韓国メディアが「パパラッチ」と呼ぶ申告制度だ。同法は、違反行為の申告者に最大2億ウォンの褒賞金を約束する。

官公庁や研究機関などは指針を作るなどして防戦に必死だ。ある研究機関では原則として接待会食を受けることを禁じた。ゴルフを禁じた機関もある。関係者らは会食で「(法施行後の)次回はサゲ、サゲ(安く安く)」と言い合う。

官公庁が集まるソウル中心部の光化門(クァンファムン)では、飲食店も自衛策に追われている。

外交省近くの刺し身専門店「リオマグロ」は1カ月前から「金英蘭法メニュー」を始めた。価格は、法律の上限額を超えない2万9千ウォン。夕食時に75%の客が頼むという人気メニュー「刺し身定食」(4万4千ウォン)から煮魚や鍋を省いた。店主の呉醒玟さん(38)は「お客の話題は新法で持ちきり。評判は良くないみたいだね」と語る。

昼夕食時に駐車場が高級車でいっぱいになる高級韓国料理店も2万9700ウォンの新メニューを始める。経営者は「元々は4万4千ウォンから11万ウォンの価格帯。予約のキャンセルもあり、打撃は計り知れない」と話す。

■公務員腐敗、新法を後押し

立法の趣旨は、韓国社会に根強く残る不正腐敗の根絶だ。10年ごろに検事が高級車や金品を受け取る事件が相次いだことを受け、国民権益委が12年、新法を提起。

政府が13年8月に法案を国会に提出した。国会審議は難航したが、その後も公務員などの腐敗が世間をにぎわせたこともあり、15年3月に国会を通過した。

昨年の国民権益委による世論調査では、59・2%が「韓国社会は腐敗している」と答えている。

弁護士会や記者協会などが憲法が保障する「法の下の平等」などを侵害すると憲法裁判所に提訴したが、憲法裁は今年7月末、同法が腐敗防止に必要だと指摘し、法施行が確定した。

黄教安(ファンギョアン)首相は今月22日の国会答弁で「公正で清廉な社会のため、汎(はん)社会的な努力が必要」と語った。

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