2018年11月1日よりタイトルをWCA(世界の時事)に変更しました。
「価値観」
フィンランド人はいいものだけを10年使う
日本のみなさま、はじめまして。
フィンランド在住の作家、モニカ・ルーッコネンともうします。
いま、世界的に、モノを減らしたり、捨てたりするムーブメントが起きています。
私が提唱したい価値観はそれとは少し異なります。
ただただモノを減らしていくだけだと、最後はなにも残りません。
「持たない」ということをファッションとして楽しむのはいいと思いますが、はたしてそれでしあわせと言えるでしょうか?
フィンランドの人びとは、そもそもあまりモノを買いません。その代わりに、「いまあるもの」を大切にするのです。家具や食器などは、おじいちゃんおばあちゃんが使っていたものを使います。
「持たない」のではなく、「いまあるものを大切にする」。
少しだけ見る角度を変えれば、私たちのまわりには素敵なモノゴトであふれています。そんなことに気づいてもらえたらと思っています。
フィンランド人はいいものだけを10年使う
「あれがほしい!」と思ったら、すぐに新しいモノを買ってしまう日本人。フィンランド人はまず「いまあるもの」でどうにかならないかを考えます。いいものだけを買い、それを長く使うことをほんとうの豊かさだと考えるのです。
先日、おばあちゃんの家にあったイッタラの古いデザインの陶器やお皿をゆずってもらいました。これは、代々受け継がれてきたものです。私の友だちは、両親から、アルヴァ・アールトのベンチをもらったと言っていました。
フィンランド人は、モノを長く大切に使います。そして、親から子どもへと代々モノを伝えていきます。イッタラやアラビアのガラス製品や陶器、家のテキスタイル、絵画やアンティークの家具……。フィンランドでは、こういった古いものを大切に使います。「古いものにこそ価値がある」と考える人が多いのです。
私がこれまでにおばあちゃんから継承したものは、イッタラのお皿のほかに、アラビアのテーブルセット、絵画、ひじかけの椅子、ブルジョア風のダイニングテーブル、ソファー、椅子などです。
フィンランド人が品質のいい製品を好んで長く使うのは、それが「自分の人生の一部」であり、「家族の伝統」でもあるからです。だから、なかなか捨てることはありません。長く付き合ってきた家具は、友人であり親せきなのです。
これらのモノには、タイムレスな(時代を超えた)価値があります。新しい製品は、かならずしもこのような気持ちにはさせてくれないでしょう。
そして、古いモノにはなにかしら「物語」があります。そのモノを囲んで家族で笑い合ったり、ケンカをしたり、泣いたりしたことでしょう。そんな物語が古いモノには染みこんでいる。そこが魅力なのです。
家具を「デザイナー」で選ぶ
長く使うことが前提なので、フィンランドの人びとの買いものは合理的です。買うときの基準は「シンプルで、素朴で、自然で、落ち着いているモノ」かどうかです。
私は「価格と品質のバランス」をとても大切にします。また、そのモノが本当に必要なのかをじゅうぶんに考えます。気軽に購入することはないのです。
また、「誰がデザインしたか」ということも、買いものの大切な基準です。特にデザイナーの名前がついているものは、大切に使って次に伝えていこうという意識が強いのです。
この国では、学校を卒業して独り立ちするときに「食器はどのシリーズで揃えたいの?」と親に聞かれることがあります。ほかの人たちもなにかプレゼントしてくれるときには、そのシリーズの食器を少しずつ足していってくれます。
日本では家具をデザイナーで選ぶという意識はあまりないかもしれません。安さと機能と、置く場所に合っているかどうかで選ぶ人も多いでしょう。災害もあり、引越しもわりと多いので、10年使い続けようと考えている人は少ないかもしれません。
また、日本人は住むところを変えると家具も変える人が多いようです。一人暮らしのときは安い家具を使っていて、結婚したらもうちょっといいのを揃えるというのがスタンダードでしょうか。
ただ、ちょっとだけ意識を変えて、友人のように長く使えるものを選んでみてはどうでしょうか?
そして、デザイナーのことを少しでも勉強して、デザイナーで統一してみるのもきっと素敵だと思います。