「利用法方で大きな活路」

画像の説明 農地を巨大物流施設に再生、「農業」から「物流」に産業構造を転換
大和ハウスが千葉県流山市で国内最大級の物流施設開発

物流不動産デベロッパーによる賃貸用物流施設の開発がますますヒートアップする一方、最大のマーケットである首都圏は用地が枯渇しつつある。こうした中、近年、物流施設の新たな集積地として注目される千葉県内陸部で、農地を東京ドーム約8.5個分の巨大物流施設に再生するプロジェクトがスタートした。

「DPL流山Ⅰ」は2018年2月の竣工予定

大和ハウス工業(本社・大阪市北区、大野直竹社長)は21日、千葉県流山市で国内最大級となる物流施設「DPL流山」(総延床面積38万7000㎡)の第1期として、マルチテナント型の「DPL流山Ⅰ」を着工。開発地はもともと第一種農地だったが、関係官庁、パートナー企業、自治体の協力で開発許可が下りた。製造業の国内生産縮小や海外移転に伴い、工場跡地の物流用地への代替が進んでいるが、有力物件は入札価格も高騰。今回のプロジェクトは、後継者不足を抱える農地に着目し、「農業」から「物流」への産業転換を後押しするもので、今後、工場跡地同様に農地の物流用地化が進むのか――注目される。

物流用地不足、取得戦略は「買う」から「つくる」へシフト

開発地(敷地面積約18万2000㎡)は、農地転用が原則不許可で、公共性の高い事業の用に供する場合等は許可される「第一種農地」。「約65%は耕作放棄地で、次の(農業)担い手がなく、半ば荒地になっていく土地だった。

農業から物流へ産業構造の転換を図るお手伝いをするプロジェクトの第1弾となる。地元の雇用と税収拡大に貢献したい」――。大和ハウスの浦川竜哉常務執行役員は起工式後の記者会見でこう語った。

流山市は、近隣の柏市(千葉)、三郷市(埼玉)、印西市(千葉)、八千代市(千葉)と並び首都圏内陸部の物流適地として注目されるエリア。

「(この土地は)第一種農地のため、(同業他社は)開発にこぎ着けることは現実的ととらえていなかったようだ。今回、国土交通省、農林水産省、千葉県、流山市、パートナー企業の多大なご協力により(第1期の)着工を迎えられた」と説明する。

「DPL流山」の立地は常磐自動車道流山ICから約2.7㎞。首都圏では湾岸部に物流用地がなくなりつつあり、国道16号線、圏央道沿いを中心に内陸部へ開発エリアが拡大。

ただ、都心や京浜港、成田・羽田空港とのアクセスに優れた「国道16号線内側」では物流用地が希少。「大和ハウスは区画整理事業を担当する部署があり、総合力をいかして、土地を『買う』から『つくる』へ(用地取得戦略を)シフトした」という。

1500~2000人の従業員の雇用を想定、バス運行も

テナント企業向けの託児所を完備

「DPL流山Ⅰ」は延床面積14万4005㎡の地上4階建て。稼働後はテナント企業にもよるが、1500~2000人の従業員の雇用を想定している。テナント企業の従業員向け託児所やコンビニエンスストア、自家用給油所を完備。従業員の雇用を確保しやすくするため、流山市を巡回するバスや近郊の松戸市発のバスも運行予定で、通勤の利便性向上も図ることとしている。

免震構造で揺れを最大で8分の1に軽減

BCP(事業継続計画)対応では、災害発生時の早期復旧を可能にする免震構造を採用。万一地震が発生しても、荷物や設備のダメージを最小限に抑え、揺れを最大で8分の1に軽減できる。また、停電対策では非常用自家発電機(500KVA)を設置。環境対策では全館LED照明を採用。梁下有効高は5.5mで床荷重は1㎡あたり1.5t。ダブルランプウェー、282台分のトラックバースを備える。

なお、開発主体は、同施設開発のために構成された「流山共同開発」。「DPL流山Ⅰ」はマルチテナント型として建設し、2018年2月の竣工を目指し、将来的には大和ハウスのJ―REIT(物流不動産投資信託)に売却予定。「DPL流山Ⅱ」(約9万9000㎡)、「DPL流山Ⅲ」(約6万6000㎡)はBTS(ビルド・ツー・スーツ)型の開発を計画している。

首都圏、近畿圏で「国内最大級」をうたった開発計画が続々

今回、3棟合計で「国内最大級」として開発される「DPL流山」だが、大和ハウスでは、大阪府茨木市で産業団地「(仮称)茨木北ロジスティックテクノパーク」の開発に着手しており、総事業面積は47ha超。また、同じ茨木市ではパナソニック茨木工場跡地でヤマトホールディングス向けの「関西ゲートウェイ」(約9万㎡)を建設中で、大規模開発計画が目立つ。

大和ハウスの「第4次中期経営計画」(13~15年度)では、不動産開発に4000億円の投資を計画し、うち物流関係は2000億円とされていたが、最終年度にはこれを上回る3200億円程度となった。「第5次中期経営計画(16~18年度)」では、3年間で過去最大となる7000億円の不動産投資を予定しており、このうち3600億円を物流関係に充当。これは土地代のみで建物の費用がさらに加わる見通しだ。

なお、賃貸用物流施設の開発規模は近年「大型化」が顕著。首都圏、近畿圏では「最大級」「最大規模」をうたった開発計画が続々と登場している。「5万㎡クラス」はあたりまえで、10~20万㎡クラスの開発プロジェクトは珍しくない。

首都圏では10万㎡超の計画として「グッドマンビジネスパーク千葉」(グッドマンジャパン、約60万㎡)、「MFLP船橋Ⅰ」(三井不動産、19万8000㎡)、「GLP流山」(グローバル・ロジスティック・プロパティーズ、3棟合計約32万㎡)等がある。

 近畿圏ではさらに大型化が顕著。「レッドウッド南港DC」(レッドウッド、2棟合計27万2000㎡)、「MFLP茨木」(三井不動産、約24万1900㎡)、「レッドウッド藤井寺DC」(レッドウッド、約18万㎡)、アスクル向けの「GLP吹田」(GLP、16万5000㎡)、「GLP枚方Ⅲ」(同、約11万9000㎡)、「プロロジスパーク京田辺」(プロロジス、約15万6000㎡)が計画されている。

コメント


認証コード7183

コメントは管理者の承認後に表示されます。