「ジレンマ」

画像の説明 オランダ・ハーグの仲裁裁判所が南シナ海での中国の主権を否定する裁定を出したのを受け、習近平政権がジレンマに陥っている。

「核心的利益」と位置づける南シナ海問題では譲歩が許されず国内外に強硬姿勢を示す一方で、9月初旬に浙江省杭州で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国としては孤立を回避し、参加国の協力と理解を得る必要があるからだ。

中国国内では現在、米系ファストフード、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の商品のボイコットを呼びかける動きが広がっている。北京紙「新京報」は20日、KFCへの抗議活動が少なくとも全国11カ所で行われたと伝えた。

ただ、中国共産主義青年団の機関紙、中国青年報は「むやみに外国企業を排斥するのは中国の投資環境の評判を落とす」と批判的に伝えた。中国当局の政治的思惑に進出企業が影響を受ける「チャイナリスク」の顕在化を警戒しているようだ。

半面、極端なナショナリズムを刺激しているのは中国政府や官製メディア自身だ。中国中央テレビは連日、仲裁裁判所の5人の仲裁人(判事に相当)がフィリピンなどから金銭を受け取っていたと決めつけ、個人攻撃を続けている。

中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語版)は20日、中国で原発を運営する国有大手、中国核工業集団(CNNC)が無料通信アプリ上に、海上浮動式の原子力発電所なら「南シナ海の島嶼(とうしょ)に安定して効率的な電力を供給できるようになる」と一時的に書き込んだことを報じた。

ただ裁定後のこうした強硬姿勢も、従来通りに南シナ海の軍事拠点化を進めることが困難になったことを受け、「国内外の目を意識した最大公約数的な措置にすぎない」(日本の中国研究者)との見方もある。

杉山晋輔外務事務次官は北京で19日、G20首脳会議での安倍晋三首相と習氏との首脳会談に向けた環境整備のため、中国の張業遂筆頭外務次官と約4時間にわたって会談した。

日本側が会議の成功に向けて最大限協力する用意があることを伝えると、中国側は「大変歓迎する」と回答した。

水面下では可能な範囲で歩み寄ろうとする中国側の姿勢の表れといえそうだ。

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