「計画立たず」

画像の説明 旧ソ連・ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所4号機での爆発事故から今月26日で30年となる。

東京電力福島第1原発事故と同じレベル7という事故の処理は今も続き、4号機を密封するための新シェルターの建設工事が完成に近付く。

首都キエフから北へ約100キロ。今年2月に現場を訪れると、大型クレーンが並び、工事の金属音が響いていた。4号機は現在、事故直後に建てられた「石棺」と呼ばれるコンクリート製シェルターに覆われているが、傷みが激しい。崩落すれば内部に残った大量の放射性物質が拡散する恐れがある。

11月下旬に新シェルターをレールで移動し、石棺ごと4号機を覆う。耐久年数は100年。その間に廃炉作業を進める計画だが、内部に残された約190トンの核燃料をどう取り出すかなど難題が山積している。

事故があった4号機の隣接地で4年前に始まった金属製の新シェルターの建設は終盤に入った。高さ108メートル、幅257メートル、長さ162メートル。今年11月下旬の移動後、1年間かけて密閉する。だが、これはまだ本格的な廃炉作業の入り口に過ぎない。

今年2月に取材した新シェルター建設現場では、工事関係者の大半は線量管理を受けながらも通常の作業着姿で働いていた。

放射線量が毎時100マイクロシーベルトという4号機近くに対し、約300メートル離れた建設現場は6マイクロシーベルト程度まで除染されているためだ。野良犬も多数すみ着き、番犬のように振る舞っている。

2015年完成を目指した当初の予定通りには進まなかったが、昨年7月、二つに分けて建造されたシェルターを合体し、外側が組み上がった。

監理部門の担当者によると現在は内部のクレーン取り付けや、4号機周辺での準備工事が進められている。技師や作業員はウクライナのほかロシア、トルコ、イタリアなどからも参加。フランスの合弁企業が建設に当たり、15億ユーロ(約1900億円)の建設資金は欧州各国や米国、日本など40カ国以上が拠出する国際プロジェクトだ。

汚染が激しい4号機から核燃料を取り出し、安全に地下保管する技術の開発も今後の課題だ。これは福島第1原発にも共通する。

ノビコフ氏は「仮に最初の1キロを取り出せたとしても、どこに保管できるだろうか? 国内に適した土地はいくつかあるが、地元住民は誰一人賛成しない。福島の事故を受け、原子力への不信感は再び高まった」と首を横に振った。

事故直後に十数万人が強制避難させられたチェルノブイリ原発から半径30キロの立ち入り禁止区域。今では森林が広がり、オオカミやイノシシ、シカといった野生動物が暮らす。国立原発安全問題研究所の環境専門家によると、その体内から事故に由来する放射性物質のストロンチウムやセシウムが検出されるという。

ウクライナのポロシェンコ大統領は昨年12月、政府に対して今年7月までに居住制限区域の見直しと一部の自然保護区化を検討するよう指示した。主な汚染物質であるセシウムの半減期が30年であるため、汚染地の空間線量が下がったことが背景にある。

チェルノブイリ原発事故

ソ連時代のウクライナ共和国のチェルノブイリ原発で1986年4月26日未明に起きた事故。4号機の非常用電源を検査していたところ、出力が急上昇し爆発。消火作業などに当たった数十人が死亡したと発表されたが、脳出血や白血病などにかかった人が後を絶たず、世界保健機関(WHO)は2006年に犠牲者数を9000人と推計した。

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