「破裂限界はいつか」

画像の説明 中国の外貨準備はなお世界最大規模を誇るが、資本流出に伴い急スピードで減少しており、中国政府は遠くない将来に人民元の切り下げ、あるいは資本統制への逆戻りを強いられるとの見方が一部で浮上している。

中国の外貨準備は1月に995億ドル減って3兆2300億ドルとなった。2014年半ばに比べると7620億ドル減と、スイスの国内総生産(GDP)を上回る規模で減っている。

中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は先週、「財新」のインタビューで資本流出について、ドル高を背景とした国内企業によるドル建債務の返済と対外投資による部分が大きいと指摘。債務返済は間もなく底を打つし、対外投資は歓迎すべき動きだと擁護してみせた。

大半のエコノミストは、中国の外貨準備にはまだ大きな余裕があるとの見方に同意しているが、一部には数年後と言わず数カ月後にはブレーキを踏む必要が出てくるとの見方もある。

外貨準備の減少ペースが加速したのは、人民銀行が海外の投機売りや国内の資本逃避に対処し、人民元買い介入を行ったためだ。

外貨準備はなお巨額だが、中国ほどの規模の経済だと、輸入や対外債務の返済に多額の準備が必要になる。その上、外貨準備の内訳が流動性の低い資産であれば、その要請にすぐには答えられない。

中国の外貨準備の構成は国家機密だが、複数の当局者は、ドル以外の通貨の価値がドル建てで減少していることも、準備高減少の一因だと話している。

ソシエテ・ジェネラルは、国際通貨基金(IMF)の指針では中国にとって安全といえる外貨準備の最少額は2兆8000億ドルで、現在のペースで減少を続ければ間もなく到達するとみる。

同社は「向こう数カ月中に到達すれば、投機的な売りが押し寄せ、人民銀行は降参して人民元レートを市場に委ねるしかなくなる」としている。

これに比べ、G20(20カ国・地域)のある中央銀行副総裁はもっと楽天的で「(安心できる最少額が)どのくらいか分からないが、2兆8000億ドルよりずっと少ないことは確かだ」と述べた。

<魔法の数字は存在せず>

HSBCのアナリストチームは理論上2兆ドルで十分だと見ているが、減少を続ければ国内投資家が脅えて海外への資金移動を加速させる恐れがあるため、中国当局が手をこまねいているとは考えにくいという。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(ニューヨーク)の新興国市場通貨ストラテジー・グローバル統括、ウィン・シン氏によると、中国の外貨準備は1年5カ月分の輸入をカバーできる水準であり、短期対外債務の外貨準備に対する比率は25%にとどまる。新興国として安全な水準と考えられる3カ月と55%よりもはるかに良好だという。

シン氏は「われわれが新興国に適用しているどんな尺度で見ても、中国の外貨準備は十分すぎるほどだ」と話した。

中国のシンクタンクのあるエコノミストも「3兆3000億ドルもあって何を心配する必要があるのか」と同意する。「中国の対外純債権は1兆5000億ドル、貿易黒字もまだ6000億ドル程度ある」

外貨準備が2025年までに2兆ドルに減ったとしても、「まだ安全、健全だ」とこのエコノミストは語った。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシン氏は、安全な水準は、究極的には特定の比率というよりも市場心理で決まると指摘する。

「魔法の数字は存在しない。大きな部分を占めるのは信頼感だと思っているが、中国の政策担当者は信頼感の回復につとめて力を入れている」という。

人民元売りを公言しているヘッジファンド、オムニのポートフォリオマネジャー、クリス・モリソン氏は「このゲームは期待と信頼感がすべてだ。市場が底をのぞいたが最後、信頼感は総崩れになる。3兆ドルを下回った時がその分岐点だと私は考えている」と話した。

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