「商社」

画像の説明 総合商社は真冬の時代に突入するのか。

大手商社7社の2015年4~12月期連結決算が出そろい、資源安にもがく各社の苦境が一層鮮明となった。

住友商事はマダガスカルのニッケル事業770億円に加え、鉄鉱石や銅などで16年3月期の減損損失が1700億円に達する見通し。三井物産はチリの銅鉱山で200億円、丸紅は北海やメキシコ湾での油・ガス田開発で730億円、伊藤忠商事も北海油田開発で180億円の減損を計上した。

こうした一過性の損失と市況低迷が各社の収益を圧迫し、伊藤忠商事、丸紅、双日を除く4社が今期純利益予想の下方修正を余儀なくされた。

さらに今年に入っても資源価格の下落は続き、鉄鉱石や原料炭の先行きについては「価格が回復するのに2年はかかる」(住友商事の高畑恒一専務)といった悲観シナリオも出始めた。

各社とも資源に代わる非資源事業の強化に躍起になっているが、今回の決算から読み取れるのは、ポスト資源の収益の柱と目されてきた食糧でも、各社とも苦戦を強いられている実情だ。

各社とも食糧事業で苦戦

三井物産はブラジルで穀物の生産、流通を手掛けるマルチグレインで90億円の減損を計上。マルチグレインといえば、三井物産が11年までに470億円を投じて完全子会社化し、新たな「コアビジネス」と位置付ける穀物事業会社だ。

ところが穀物市況の低迷に天候不順が追い打ちをかけ、コアビジネスどころか同社の“お荷物”となりつつある。マルチグレインなど食糧を含む生活産業分野は唯一の赤字部門となる見通しだ。

また丸紅が13年に2700億円で買収した米穀物メジャー、ガビロンは15年3月期にのれん代の減損500億円を計上しているが、いまだに「期待している(収益)レベルまでどうしてもこない」(國分文也社長)。丸紅や三井物産は人員削減を含むコスト構造を抜本的に見直し、てこ入れを図る方針だ。

業界トップの三菱商事も、14年に1500億円を投じて完全子会社化したノルウェーのサケ養殖大手セルマックの業績が、市況低迷で振るわない。

非資源に強い伊藤忠商事も、米ドールから買収したアジア青果物事業で苦戦を強いられている。天候不順でバナナの生産量を確保できず、販売単価が下がっていることが原因で「想定外に収益が低迷している」。

要するに各社ともこの数年、巨額を投じて食糧事業の強化に傾注してきたが、成功の果実を手にした商社は見当たらない。

「一体何で稼げばいいのか」(財閥系商社社員)といったため息も聞こえてくるが、資源バブル崩壊後の成長エンジンをいまだに見いだせないことこそが、商社が抱える本当のリスクなのだ。

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