「電力戦争」

画像の説明 今後、首都圏では電力会社同士でノーガードの殴り合いが繰り広げられる 

やられたら、やり返す──。4月1日に始まる家庭向け電力市場の自由化を控え、最大の市場である首都圏で顧客争奪戦が激化している。

中京地域を地盤とする中部電力が1月末、東京電力の供給エリアである首都圏向けの料金メニューを発表し、2月1日から申し込み受け付けを開始した。

中電は自社で契約を獲得するほか、国際石油開発帝石や中小のガス会社と提携し、着々と販路を拡大させてきた。できるだけ早い時期に、目標とする10万件の契約獲得を達成すべく、攻勢を強める考えだ。

中電はさらに、料金メニュー策定など自由化準備を陣頭指揮してきたエースの林欣吾お客様本部部長を4月1日付で東京支社長に据えるなど、首都決戦へ態勢を整えている。

電力自由化前は、各電力会社は自社の供給エリア内で独占的に電力を販売してきた。自由化後は供給エリアの壁がなくなる。すでに東電は、自社の供給エリア外である関西、中京向けの料金メニューを発表していた。主要電力会社10社の中で、いわば最初に“越境”し、宣戦布告していたわけだが、中電はそれに対抗する形で、東電エリアへ本格的に上陸した格好だ。

東電の供給エリアである首都圏は、人口と企業が集中している最も肥沃な市場だ。人口減で総電力需要が伸びない中で、東電以外の主要電力会社とガス会社などの新規参入組は、収益拡大を狙って東電の牙城である首都圏に攻め入り、シェア奪取の機会を虎視眈々とうかがっている。

中電の首都圏向けのプランは「カテエネプラン」。標準的な世帯向けではなく、電気使用量が多い世帯向けだ。2世帯住宅や、小規模な店舗を併設しているような住宅が対象だ。同様世帯を対象にしている東電の料金メニュー「従量電灯C」と比較して最大5%、電気の使い方により新料金メニュー「プレミアムプラン」と比較して最大10%程度安くなる。

環境省決断が競争を激化か

足元では、環境省が首都攻略を後押しする決断を下した。

2月9日、二酸化炭素(CO2)排出量の問題で新たな石炭火力発電所の建設計画を認めてこなかった環境省が、厳格にCO2排出量を電力業界が管理することを条件に、建設計画を認める方向へ転換したのだ。

東京湾岸を中心に、関東近郊では中電や関西電力、東京ガスなどが、首都圏を攻めるために新たに石炭火力の建設計画を進めている。石炭火力は原子力発電に次いで発電コストが安く、低価格で競争力のある料金メニューを作る上で強力な武器となる。

今後、東電に宣戦布告されている関電が首都決戦に参戦するのは確実。火花を散らす戦いは、しばらく収まりそうにない。

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