「危機」

画像の説明 中南米最大の経済大国に危機が迫っている。

ブラジル全土で反政権デモ、3月に続き再び
ブラジルでは昨年、ルセフ大統領の退陣を求める大規模な反政府デモが相次いだ

2016年の年始を迎えるころ、ブラジルは熱狂的なムードに包まれているはずだった。何しろ8月にはリオデジャネイロで南米初のオリンピック(五輪)が開催され、ブラジル国民が最も得意とする「華々しいパーティーを開く」チャンスが訪れる。しかし実際には、ブラジルは政治と経済の大きな危機に直面している。

2015年12月16日、格付け会社のフィッチはブラジルの信用格付けを「投機的等級」(ジャンク級)に引き下げた。3大格付け会社のうち、ブラジルの国債を投機的に格下げしたのはこれで2社目だ。

その数日後には、財政安定化を目指してブラジルのジルマ・ルセフ大統領が任命したジョアキン・レビ財務相が、失意のうちに就任1年を待たずに職を辞した。ブラジル経済は2016年に2.5~3%ほどのマイナス成長が予想されており、この数字は2015年からさほど改善されていない。石油に依存し経済制裁に苦しんでいるロシアでさえ、ブラジルと比べればまだ持ちこたえているほどだ。

経済の問題と並行して、ブラジルの連立政権は国営石油会社ペトロブラスを取り巻く大規模な汚職スキャンダルで信用を失っている。さらには財政赤字の規模を隠蔽してきたと糾弾されているルセフ大統領も、議会での弾劾手続きに直面している。

BRICSのBたるブラジルは、本来なら急成長する新興経済国の先鋒になるべき存在だ。にもかかわらず、政治の機能不全に直面しており、さらには制御不能のインフレに逆戻りしつつあるようだ。厳しい選択をしなければ、ブラジルを正しい軌道に戻すことはできない。だが現在のところ、ルセフ大統領にそうした選択をする意欲があるようには見えない。

大統領の失政

ブラジルの苦境は、他の新興国と同様に、世界的なコモディティー(商品)価格の下落に起因している部分もある。

だが、ルセフ大統領とその所属政党である中道左派の労働党(PT)は、もともと悪い状況をさらに悪化させた。2011年から2014年にかけての1期目に、ルセフ大統領は浅はかにも大盤振る舞いを敢行し、年金支給額の引き上げとお気に入りの業界に対する非生産的な税控除に支出した。2010年時点で国内総生産(GDP)比2%だった財政赤字は、2015年には同10%にまで膨らんだ。

コメント


認証コード1643

コメントは管理者の承認後に表示されます。