「北海道の味な作戦」

画像の説明 国産米の代表銘柄「コシヒカリ」を擁し、日本一の米どころとして君臨してきた新潟県に対し、広大な土地で複数の有力ブランド米を育てる北海道が各種指標で猛追し、首位交代の可能性も現実味を帯びてきた。

新潟県も来年には新ブランドを売り出し、王国を死守しようと必死だ。

「思ったより甘い」「名前にインパクトがあるし、おいしい」。新潟市の和食レストラン「静香庵」で、先行提供されている新ブランド米「新之助」を頬張った主婦2人が思い思いの感想を口にした。平野徹夫料理長によると、2杯目の注文も増えて提供時間帯の炊飯量は2倍になった。

コシヒカリ誕生の1956年以来、新潟で60年ぶりの本格ブランド。

豊かなつやの大粒米は、芳醇(ほうじゅん)な甘みと弾力性に富む。食味を上げるため、たんぱく質の含有量に上限を設け、農家には栽培履歴の徹底した管理も求める。

来年デビューするまでの「助走期間」には、東京の有名料亭も含めて先行提供。高級なイメージの定着を狙い、コシヒカリとの2本柱に育てる戦略だ。

一方の北海道。「新潟をしのぐ生産地になれる」。ホクレン農業協同組合連合会(札幌市)の幹部は自信を隠さない。

2014年の収穫量は首位新潟66万トンに対し、2位北海道64万トンと肉薄。産出額も1296億円で全国一の新潟を1105億円の北海道が追い、その差は年々縮まっている。作付面積は新潟12万ヘクタール、北海道11.1万ヘクタールだ。

北海道は80年代から耐冷性を備えた高品質米の研究に取り組み、でんぷんの一種で、含有量が少ないほど粘りやうまみが増す「アミロース」の値が低い米を掛け合わせるなどして品種改良を重ねてきた。

日本穀物検定協会の食味ランキングで、あっさりとした食感の「ななつぼし」(04年発売)が10年産から、豊かな甘みと粘りの「ゆめぴりか」(09年発売)が11年産から最上級の「特A」を獲得し、ふっくらした食感に甘みも加わった「ふっくりんこ」(07年)も14年産が特Aに(収穫量が少なく参考評価)。

道産米は鳥さえ見向きもしない「鳥またぎ」と言われたこともあったが、「おいしく、値崩れしない」と評価が一変した。アミロース値は夏が冷涼なほど高くなるが、地球温暖化の影響で夏場の平均気温が上昇したことも追い風になった。

有力3ブランドを柱にした、したたかな広報戦略も見逃せない。

CMに人気タレントで辛口コメントでも知られるマツコ・デラックスさんを起用。米袋にマツコさんのシルエットをモチーフにしたシールも張り、米選びを左右する女性の認知度は、3大都市圏で「ゆめぴりか」が85%になった。

ホクレンの佐藤俊彰会長は「ブランドの定着・維持が重要で、おいしさや安定供給といったさまざまな面で高い水準を目指す」と、質量ともトップを目指す意気込みを語る。

自他ともに「宣伝下手」を認める新潟県。昨年9月の「新之助」発表記者会見では、「AKB48」の姉妹グループとして新潟で活動する「NGT48」も同席させたが、知名度はそれほど上がっていない。

新潟市のレストランで新之助を味わった主婦らも「都会の人たちに口コミや試食でもっと知ってもらわないと」と、大消費地でのPRが必要と口をそろえる。

県は現在、家庭で試食してもらえる少量パックの頒布も検討している。米王国の面目躍如となるか--。

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