タイ新憲法案に不安の声

画像の説明首相、非議員も/上院は選挙なし

クーデター後の軍事独裁体制下にあるタイで、民政復帰に向けた新憲法案の起草作業が本格化し、新しい政治制度の骨格が見えてきた。ただ、首相を国会議員でない人物から選ぶことも可能にし、上院をすべて非民選議員にする案が有力視され、民主化の行方を不安視する声が上がっている。

憲法起草委員会は今月半ばから逐条審議に入った。同委がすでに合意したいくつかの原則が物議を醸している。首相は必ず下院議員から選ぶとする規定を設けないこと▽小選挙区比例代表併用制の導入▽上院の構成を任命議員と各職業団体から選出された者とし、事実上公選をなくす、などだ。

非議員の首相は議院内閣制に反するが、タイ現代史では内閣が全員民選議員だった時期は長くない。選挙を通じた「強い首相」はタクシン元首相が最初と言え、反タクシン派に拒絶感がある。「軍・官僚を中心とする伝統的支配層の意に沿う人物を首相にする余地を残す狙いでは」(アッサダーン・パーニッカブット元ラムカムヘン大学政治学部長)との指摘がある。

小選挙区比例代表併用制は、比例代表の得票率で議席数を各政党に割り当てる。単独政党が過半数をとるのが難しく、タクシン派政党の復活を防ぐ効果があるとみられている。

タマサート大学講師のプラチャーク・コンキラティ氏(政治学)は「タクシン政権は、政党が多数派の大衆の支持を基盤に強い指導者・政権として国を運営する形だったが、タクシン氏の登場以前に引き戻そうという印象だ」と話す。憲法案起草などの一方で、暫定議会は先週、在任中に職務怠慢があったとしてタクシン氏の実妹のインラック前首相を弾劾(だんがい)。検察当局も訴追方針を決め、インラック氏は政治生命を失いつつある。

民政移管プロセスが「タクシン派排除」の色彩を帯びるなか、クーデター後初の米政府高官としてタイを訪れたラッセル国務次官補は26日、個人名には触れずに「選挙で生まれた指導者が排除され、クーデター実行者によって弾劾されている時、国際社会は『政治的な意図に基づいた動き』との印象を受ける」と批判した。

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