農協改革の本丸「全中解体」へ 地域農協の自由度を高める

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政府は、全国に約700ある地域農協を束ねてきたJA全中(全国農業協同組合中央会)が農協法で認められている監査権などを全てなくし、「解体」する方針を固めた。全中による地域農協の統制をなくし、自由な発想で農業を振興する環境をつくる。

地域農協を監査・指導する特別な権限を与えられた全中と、47都道府県にある農協中央会の制度を規定する農協法第3章の削除を柱とした同法改正案が、1月下旬から始まる通常国会に提出される。

実際に、西川公也農相は6日の会見で、「全中は強制権限を持たない新たな法人形態に移行する必要がある」とし、公式の場で初めて、農協法に定められた全中の廃止に踏み込んだ発言をした。

法案作成に向けた政府・与党の調整はこれからだ。西川農相がこのタイミングで、自民党農林議員が反対する全中廃止を打ち出したのは、安倍政権の強い意志を示し、機先を制する狙いがある。

会見前日の5日、安倍晋三首相らと三重県の伊勢神宮に参拝した西川農相は、新幹線での移動中、全中廃止を念押しされたという。

新年早々、閣内の意思統一を図るほど、「安倍首相の農協改革のボルテージは上がっている」(政府関係者)。全中などの政治団体が昨年12月の衆議院選挙で、自民党候補者に、農協改革の阻止を迫ったことに反発しているためだ。

政府は安倍首相の決意を背景に、農協法改正案について与党の合意を取り付ける考えだ。全中の後継組織の形態や、全中解散までの移行期間などに議論の対象を限定し、速やかに決着させようとしている。

農業振興の強化が主眼

政府が目指す農協法改正が実現すると、農協中央会という組織形態や監査・指導権限がなくなるのはもちろん、全中は、行政に意見する建議権などを失う。地域農協やJA全農といった会員から、法律に基づいて負担金を集めることもできなくなる。このため、全中が果たしてきた機能や体制の整理・縮小は避けられない。

政府の規制改革会議農業ワーキンググループの金丸恭文座長は、全中の一部が、公認会計士監査を行う監査法人として独立することや、シンクタンクとして再出発することなどを提案している。一方、全中は、自らの中核的な事業である中央会監査について、公認会計士監査より割安で、組合員が出資し、運営する農協の特性に適しているなどとして、引き続き農協法上の位置付けを求めている。

政府関係者は「農業を振興する実力があれば、何らかの組織として残れる。その力がないなら、他の組織が吸収するなど、JAグループで考えるしかない」と話す。

政府・与党は反対派議員を封じて、農協改革を敢行し、農業所得を増やせるのか。西川農相の手腕が問われる局面だ。

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