「脱中国」の香港富豪、習主席と不和説

画像の説明 香港を代表する富豪、李嘉誠氏(86)長江実業会長による「脱中国」が中華圏で注目を集めている。

李会長は最近2年間で1000億人民元(約1兆9000億円)相当に上る中国本土の不動産を売却したのに続き、9日には香港にあった持ち株会社の登記先を英領ケイマン諸島に移すと発表した。

李会長は記者会見で、「香港上場企業の75%が本社をさまざまな規制がない(租税回避地の)ケイマン諸島に置いている。(登記先の移転は)業界のトレンドに従ったものだ」と述べ、経済的な判断だったと説明した。

しかし、香港メディアの明鏡網をはじめとする中華圏のメディアは13日、李会長の香港離れは習近平国家主席との微妙な関係が原因だと分析した。李会長と習主席の不和説は2012年3月に行われた香港行政長官選挙にさかのぼる。

当時香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは「習近平副主席(当時)が北京で李会長と会い、行政長官選に出馬した梁振英氏(現行政長官)を支援するよう求めたが、李会長は唐英年(ヘンリー・タン)氏への支持を変えなかった」と伝えた。李会長が習主席の意向に従わなかったことから、李会長は何をやるにも気に入らない存在になったとされる。

2人の溝は香港の民主化デモでさらに深まった。梁振英行政長官に批判的な李会長は、学生によるデモ隊が「行政長官公選制」と共に「梁振英辞任」を叫んだのに対し、沈黙するかのような姿勢を取った。中華圏メディアの多維新聞網は「李会長らは北京の指示を受け、ようやく学生デモ隊を批判する声明を出した」と報じた。

李会長が習主席の香港統治方式に不満を抱いたとの見方もある。台湾紙自由時報で外部のコラムニストは「李会長が本社を英国領に移転しようとしているのは、中国と香港の司法制度を信用していない表れだ」と指摘した。

その上で、「今回の措置は1997年の香港返還前に本社を英国に移転したHSBCよりも衝撃的だ。中国の一国二制度の原則に不信任票を投じた格好だ」と指摘した。李会長が習主席による汚職撲滅路線を恐れた可能性もなる。香港の不動産財閥の新鴻基地産発展(サンフンカイ・プロパティーズ)では、郭炳江(トーマス・クォック)会長が収賄罪で禁錮5年の判決を受けている。

李会長はトウ小平時代から中国の最高指導者との親交を利用し、中国本土で事業を拡大した。李会長は1989年の天安門事件後、外国資本が中国から投資を引き揚げる中、果敢に投資を行い、トウ小平氏の信頼を得た。江沢民時代の93年には天安門の東側の中心商業地の開発権を獲得した。

江沢民元国家主席は2000年に李会長の家族を北京に招き、「我々は長年の友人だ」と述べた。しかし、李会長は習主席と親交を結ぶことには失敗したとされる。

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