両親死後の“とりあえず空き家”は最悪の選択肢!

画像の説明 正月明けの今だからこそ考えたい「実家問題」

日本は世界最速で「実家問題」が顕在化する国

仕事始めから1週間が経った。新年会賀詞交換会など、いろいろな局面で多くの方々とお会いした。その中でも何人かの方々から、実家の両親が住む不動産についての話を聞かされた。

筆者は第二次ベビーブーム世代。両親世代は定年を迎えてしばらく経過し、体も衰えて来る頃だ。子世代である私達は、否が応でも介護などをイメージした「両親のこれから」と、実家そのものをイメージした「実家問題」を考えざるを得ない時期を迎えている。

日本は言わずと知れた世界一の高齢化社会。それと相まって大都市への人口集中(=地方の衰退)が猛スピードで進む、世界一の実家問題を抱える国になるだろう。

本連載の各回で繰り返し述べてきたが、住まいは子どもが独立したり、両親が高齢になり介護や看病が必要になったり、働き方や収入の変化よって、柔軟に変えるべきだ。筆者はその観点で、日々そのためのヒントを考えてきたが、「実家問題」はまさに本連載で考えるべきテーマだ。

今回は不動産によりフォーカスをあてて、具体的な方法を考えてみたい。

想像以上にコストがかかる“とりあえず空き家”の選択

実家問題でもっとも想像しやすいのが、両親が亡くなったり、介護が必要になったりして、今の家に住まなくなった場合だろう。子世代にとって、どうするかという選択を、すぐに迫られる。

まず最初に思いつく選択は「そのままにしておく(=空き家になる)」。

いずれは、実家問題にケリをつけなければならないのだが、“とりあえず空き家に”という選択肢を選ぶ方はけっこう多い。だが、空き家問題は、地域社会にさまざまな弊害をもたらすと盛んに取り上げられている。もはや、軽々に“とりあえず空き家に”などと言っていられないご時世になっていることを認識しなければならない。

この選択肢をとる子世代の理由は、以下のようなところだろう。

(1)相続人(子世代)全員の同意が得られておらず、決めかねている

しかし、先延ばしにすればするほど同意は得られず決まらないことも多い。ぐずぐずしている間に、実家の周辺での倒壊事故や空き巣問題、ゴミの不法投棄問題などが起こると、さらに同意は得られないだろう。

また新たに発生した問題の解決もしなければならず、さらに手間が必要になる。そもそも、同意が得られるまでは、子世代の誰かが定期的に様子を見にきたり、掃除をしたりする、空き家の管理をせねばならない。

管理をしなければならないというのは、考えてみれば当たり前だが、子世代は同意を得ることに気を取られて、すっぽりと頭の中から抜け落ちていることが意外と多い。管理を外注することもできるが、それはそれでコストが掛かる。誰が負担するのかという、また新たな問題が、子世代の間に生まれてしまう。

(2)建物を解体すると、土地の固定資産税が増える

実家に誰も住まず、手入れもできないから建物自体が朽ちていくばかりなのであれば、壊して更地にしてしまえばいい、と思うかもしれないが、住まなくなり直ちにこの選択肢をとる人は少ない。なぜなら、更地にした途端に、税の減免が使えなくなるからだ。

場合によっては、土地の固定資産税が約6倍にもなるケースがあるという。ならば、誰も更地にして保有するという選択は取らない。だから、“とりあえず空き家”となり、全国津々浦々で空き家問題が発生しているのだ。

ただ、政府は空き家に対しても適用されていた税の減免を見直す方針を示している。この動向は注視していく必要がありそうだ。

とりあえず空き家”という選択肢をとる人にとっては、そうせざるを得ない事情があるのかもしれないが、それは単なる問題の先送り。放っておけば、想像以上にコストがかかる。「何とかしなければ」という気苦労をずっと背負っていくことにもなり、もっともよくない選択肢だ。

検討すべき4つの選択肢

とりあえず空き家”ではなく、検討すべき選択肢は以下の4つのパターンが考えられる。

(1)子供の誰かが住む
(2)実家(土地建物)を売却する
(3)実家(土地建物)を活かして、他人に貸す
(4)使わなくなった建物を壊して、別の事に利用(活用)する

これらのうち、もっとも多くのケースで選択される(1)と(2)について、詳しく述べていこう。

「子供の誰かが住む」という選択肢の最大の利点は、住むことになった人がかつて生まれ育った家を、概ね無償で手に入れられることだ。懐かしい街で、両親との思い出がたくさん詰まった暮らしが得られるかもしれない。

だが、もっとも大切なのは、以下のようなケースが起こりえることを想定して、兄弟間でしっかりと同意、了解を得ることだ。それがなければ、後々、泥沼の“争続”トラブルが発生する。

住み始めて数年、介護施設にいる両親が亡くなって遺産相続をする時に問題が起こる。両親が残してくれた資産の中で、現金が多くある場合などは良いが、現金がわずかで、資産と呼べるものの大半は不動産(実家)という場合などに、問題が勃発する。つまり、「両親の遺産のほとんどは、実家に移り住んだ子のものになった」というやっかみだ。

その解決策として「実家を共有名義にして、兄弟みんなのものに」とすると、売却することになった場合に、さらに厄介だ。全員の同意、全員分の実印と印鑑証明など、大変な苦労が待っている。他の兄弟分を買い取るとなっても、後々細かい金の話が出てきて、話がこじれる。

多くのケースでは、空き家にもならず、実家をそのまま活かせる一番良い選択となるため、一番最初に検討すべき選択肢だろう。しかし、その条件となる「兄弟間の同意、了解」が曖昧であれば、一転して「こんなに揉めるのなら、もう手放そう」という、最悪な状態になってしまう。

実家売却は相続人だけでなく一族全員の同意を得るのがカギ

次に(2)の売却という選択肢だ。

ほとんどの場合、かなりの築年数の物件であるだろうから、建物価格はゼロに近い。地面(土地)の価格として売買されるだろう。

不動産は不思議なもので、よほど人里離れた田舎でなければ、望み通りの価格ではないかもしれないが、売れるものだ。売却が済めば、当然現金が手に入る。相続の際にこの現金を、定められた(遺言や法廷割合など)割合で分ければ、先に述べたように揉める可能性も少ない。

先ごろ、相続税の税制度が改定され、より多くの人に納税可能性が出てきた。不動産などの現物資産を相続して相続税を請求されたとしても、十分な現預金があればよいが、なかなかそうはいかないだろう。こうした際に実家不動産を売却した現金を分割相続していれば、税金を納める際の原資としても使うことが可能だ。

こうした際に注意しておきたいのは、先の選択肢の(3)だ。「誰かに貸す」という選択を一度とってしまうと、借主を守るという観点から、貸す側(所有者)の都合だけで「今すぐ、相続税納付のためのお金が必要でで売却したいから、出て行ってくれ」とは言えないということだ。売却の時期に制限がかかるため、そう遠くない将来に売却を考えているなら、(3)の「誰かに貸す」という選択には慎重になった方が良いだろう。

実家(不動産)の売却には、いくつかのポイントがある。

まず、地方都市などでは、固定資産税などの評価に使われる路線価に比べて、実際の取引価格が低い可能性があることを覚悟しておく必要がある。また、場所によっては売却に年単位で時間がかかることもある。

次に不動産売却をサポートしてもらう、売買仲介会社選びにも注意しなければならない。

相続不動産の売却には、注意を要するポイントも多いため、経験が少ない会社や担当者は少々心もとない。知り合いというだけで安易に選ぶのではなく、経験と実績がある会社のほうがいいだろう。

最後に、売却の際には、相続する兄弟姉妹だけでなく、時には親類たちも説得する必要があることも心しておきたい。なぜなら、実家に対して思い入れがあるのは、相続人だけではない場合もあるからだ。

実家(不動産)問題をスムーズに解決する秘訣は、前回書いたように、両親が健在なときにしっかりと話しておくことが最大のポイントとなる

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