公務員が猪と間違え農家の女性を射殺

画像の説明 悲劇生んだ中国の役人・富裕層「違法狩猟ブーム」

公務員による猟銃誤射で死亡した女性の祭壇

中国湖南省衡陽市郊外の農村で11月、公務員の猟銃誤射により農家の女性が死亡した事件をきっかけに、中国国内で、違法な狩猟を行う役人や富裕層が増加している実態が明らかになり、特権階級に対する一般市民の不満がさらに高まりそうだ。

中国メディアによると、事件が発生したのは11月9日の正午ごろ。元市政府幹部を含む総勢11人でイノシシ狩りをしていた同市食品薬品監督管理局の職員、肖衛東容疑者が、山中で茶の実を採取していた羅運英さん(57)をイノシシと誤認し、猟銃で撃った。

1発は腹部に、もう1発が頭部に命中。狼狽した肖容疑者は救急車の出動は要請しなかった。電話で事態を伝えられた地元ガイドが事件現場に到着した時には、羅さんはすでに死亡していたという。肖容疑者は遺体を現場に残したまま下山し、派出所に自首した。

翌日、肖容疑者の親族が謝罪に訪れ、葬儀費用として10万元(約190万円)を置いていったという。羅さんの家族は、肖容疑者が“替え玉”である可能性などを疑い、当局に説明を求めたが、地元警察は、事件発生から7日後の11月16日になって、やっと捜査結果を公表した。

調べによると、肖容疑者が使用した猟銃は、同市衡南県の元体育局長が所有する2連猟銃だった。肖容疑者は過失致死罪の疑いで逮捕され、元体育局長ら同行者10人も猟銃の違法所持の疑いで拘束された。事件現場周辺は禁猟区だったことも明らかになった。

12月12日付の中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報(英語版)によると、肖容疑者は今年、地元の狩猟協会に入会したばかりだった。中国のニュースサイトが協会の名簿を入手。そこに名を連ねていたのは、地元政府や国有企業の幹部だった。

ある法曹関係者は匿名で同サイトに、「多くの地方の狩猟協会は、金持ちや権力者のクラブになっている」と証言。同省の別の地域の狩猟協会幹部によると、狩猟クラブへの入会費が2万1500元(約41万円)、その他の諸経費を加えると約10万元(約190万円)が必要だという。

こうした狩猟協会はもともと1990年代初頭に、作物を荒らす野生動物の駆除を目的に設立された。しかし、中国ではいかなる団体、個人も、銃の所持、製造、売買が厳しく禁止されている。認可された狩猟協会も、銃が使えるのは9~12月の間だけで、禁猟期間は銃を当局に返却する決まりになっている。

肖容疑者が使用した猟銃が元体育局長の所有物であることは明らかになったが、入手経路などは伏せられたままだ。ある会員は同紙に対し、「銃はクラブではない別のルートで手に入れた可能性がある」と指摘。中国刑法では違法な銃の製造や売買、銃や弾薬の備蓄の経緯が重大である場合、「10年以上の懲役もしくは無期懲役、死刑」と定められている。

環境保護団体の関係者が同サイトに明かしたことろでは、最近、狩猟を行う地方政府関係者が増えているという。団体関係者は「その多くは違法なルートで銃を手に入れている」と、闇ルートの存在を示唆した。

こうした違法な狩猟愛好者のうち、地方政府関係者が占める割合は10%とも、約半数とも言われている。「彼らは権力のある連中で、もし捕まっても簡単に逃れられる」との批判も出ている。

中国紙、華商報(電子版)によると、犠牲になった羅さんは、1男2女を育て上げ、今は夫と祖父、孫2人と暮らしていた。出稼ぎに出た子供らは省都の長沙市などに家を持ち、羅さんらを呼び寄せようとしていた。遺品を整理していた息子の董長武さんはたんすの中に、多くの新品の衣服を見つけた。子供らが羅さんに贈ったものだった。

かつて羅さんはこう言っていたという。「家では農作業をしなければならない。新しい服を着たらすぐにボロボロになってしまう。長沙に行ってから着るよ」-。その夢は違法な狩猟者が発射した銃弾によって、一瞬のうちに奪われてしまった。

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