菅原道真

画像の説明 受験生たちの信仰を集める「天神さん」も、世にあだをなす怨霊と恐れられた時期がある。

そう書けば、小銭をつまんだ若者は渋い顔かもしれない。菅原道真を「日本三大怨霊」の一つとする説は、確かにある。

▼政争に敗れた道真は、配流先の大宰府で生涯を閉じる。それを境に政敵の一派が相次いで不慮の死を遂げ、内裏が落雷に襲われる災厄も起きた。いずれも、「天満大自在天神」と神格化された道真の「たたり」として、当時の宮中を震え上がらせたという。

▼それゆえ道真は丁重に祭られ、いまや「学問の神」として多端の日々だ。一方、東京・大手町で三井物産などが進める再開発では計画区域の一角にある「将門(まさかど)の首塚」が開発を免れたという。こちらは「触らぬ神に」を地で行った。

▼京でさらされた平将門の首は「体があれば、もう一戦」と、夜ごと気炎を上げたとの伝承がある。首は生国のある東を目指して飛び、今の首塚がある地で力尽きた。とはいえ、そこに人の手が入る度、関係者に災いをなしたという。

▼戦乱に明け暮れ、後の世にまで存念を残した将門に約千年後の日本の選挙はどう映るのか。次の任期中に国の行く末を託す憲法改正もあろうか、という転機だ。わが身を守る集団的自衛権を語り、経済を語り、老いる社会の福祉を語り、エネルギー政策を語るには、2週間足らずの時日は短かった。

▼やにわに訪れた選挙の季節もこれで終わり、ここから先は「選良」たちによる政治の時節だ。恨みならぬ後顧の憂いを残さないためにも、われわれ有権者は、手元の一票を箱の中に投じるしかない。悲しいかな、国の盛衰を占うのに小銭をつまんで「神頼み」とはいかないのだ。

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