本田宗一郎の問いかけ 

画像の説明 自動車の運転者と同乗者の命を守る、切り札となるのが、エアバッグである。

発明者の一人とされる小堀保三郎さんは、小学校を出てすぐ奉公に出され、独学でさまざまな技術を学んだ。

▼昭和30年代後半には、既に衝突を感知するセンサーや、瞬時にバッグを膨らます装置の開発に成功していた。関連の特許は、世界14カ国に及ぶ。しかし、生前の実用化はかなわなかった。

▼日本の自動車メーカーでは、ホンダが最初に商品化に成功する。62年に「レジェンド」に搭載するまで、16年もかかった。開発に参加した自動車部品メーカーのタカタは今や、世界第2位、シェア2割を占めるまでになっている。

▼そのタカタ製エアバッグに、重大な欠陥が見つかった。衝突時に破裂して、金属片が飛散する危険があるという。米国などでは、ホンダ車に装備したエアバッグで死亡事故も起きている。ホンダは、全米規模でリコール(回収・無償修理)を行い、タカタも全面協力する方針だ。

しかし、後手に回った両社の対応に、批判の声が高まっている。これまで数え切れない人々の命を救ってきた日本の技術への信頼に、これ以上傷のつくことがないよう祈るばかりである。

▼「エアバッグの価値は何だ?」。ホンダで開発の中心となった小林三郎さんは、創業者の本田宗一郎氏から、何度も問いかけられた。そのたびに、「安全です」と答えてきた。小林さんは、答えた内容ではなく、答え方と目を見ていたのではないか、と後から思い当たる。心の底から、前向きに取り組んでいるのか、測っていたというのである。

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