2018年11月1日よりタイトルをWCA(世界の時事)に変更しました。
石油大国でモノ不足「北朝鮮並み」?
ベネズエラ 低価格品の周辺国への密売で払底「二度買いはダメ」
ベネズエラの首都カラカスのスーパーで指紋判定器に指を添える男性客
反米左派マドゥロ政権下の南米べネズエラで、豊富な石油収入があるにも関わらず食料品などのモノ不足が深刻化している。「21世紀の社会主義」実現を掲げ、価格統制している廉価な商品を隣国コロンビアで密売する例が多発しているのに加え、チャベス前政権時代から農業分野への投資を怠ってきたツケが回ってきた形だ。マドゥロ政権は政府系商店のレジに、顧客が転売目的で“二度買い”するのを防ぐための指紋判定器を設置するなど、事態改善に躍起となっている。
品不足が目立つのは牛乳やコメ、コーヒー豆、トウモロコシの粉といった価格統制品。地元調査会社によれば、市民は通常の30%程度しか購入できない状況にある。
石油収入が年間で1140億ドル(約13兆2千億円)にも上る世界有数の石油大国ベネズエラで、国民がひどいモノ不足にあえいでいることについて、米紙ウォールストリート・ジャーナルは「(貧しい)北朝鮮やキューバ並み」と、痛烈に皮肉っている。
モノ不足の背景には、価格統制された低価格の品々を犯罪組織が国内各地で大量に購入した後、利益を得ようと隣国コロンビアの北部地帯などで密売していることがある。ベネズエラの経済専門家によれば、流出している価格統制品の割合は全体の10%以上という。
マドゥロ政権はこれ以上の流出を阻止するため、コロンビアとの国境沿いにある検問所の夜間通行を禁止している。
一方、農業分野に積極的に投資してこなかったことも、モノ不足の一因と指摘する声は多い。
ベネズエラは反米左派オルテガ政権下の中米ニカラグアや、カリブ海に浮かぶジャマイカなどに石油を輸出する際、代金のかわりに農産物を受け取ることもある。このため、「農業分野を盛んにするという動機づけがベネズエラ国内で働きにくい状況にある」(駐カラカス外交筋)という。
政府はここ数年、民間地を農地として国有化するなど、農業分野に急速に力を入れつつあるが、耕運機をはじめ農機具の整備も十分ではないという。
国内ではモノ物不足の影響で、インフレが着実に進行。8月末時点のインフレ率は63.4%(年率)にも上り、マドゥロ政権への風当たりは強まっている。