国道復旧、無人の沿道 高線量で降車禁止、

画像の説明 民家壊れたまま 東日本大震災4年目

開通した国道6号を通ると、ゲートで守られた家々が目に飛び込んできた

福島県沿岸部の国道6号で、一般車の通行規制が解除されて2カ月がたった。3年半ぶりに通行が自由になり、人や物の流れは加速する。ただ、周囲の帰還困難区域の放射線量は高いまま。沿道には、取り残されたように無人の町並みが広がる。

■双葉~富岡14キロ

規制が解除された国道6号は、双葉町から富岡町までを結ぶ約14キロ。14日、双葉町から南に向かった。

手前の浪江町で国道を封鎖していた柵は消え、警備員の絵が描かれたパネルが立っていた。交差点の信号は、ほとんど黄色の点滅か青色で、流れはスムーズだ。

沿道に人の姿は見えない。一帯は放射線量が高い帰還困難区域に指定されている。国道わきに民家が並ぶが、いずれも不審者の侵入を防ぐゲートが塞いでいた。車窓から見える民家は屋根が壊れ、柱が傾いたままだ。

東京電力福島第一原発に近い双葉町と大熊町の町境。海側に原発の排気筒が見えた。車内に置いた放射線量計は一時、毎時9・66マイクロシーベルトに。多くの自治体が除染目標とする「0・23」の42倍だ。

交差点には車の進入を防ぐ警備員が立っていた。放射性物質が入り込むのを防ぐマスク姿だ。駐車する車はない。放射線量が高く、駐停車や降車が禁止され、バイクも通れないからだ。

富岡町に着くまで約20分。土砂を運ぶダンプや軽トラックとすれ違うが、沿道は閑散とした景色が続いた。区間を通り過ぎるまで、線量は1マイクロと8マイクロ程度の間を不規則に動いた。

規制が解除されたのは9月15日。除染や復興業者以外は、通勤や通院のために避難自治体の許可証を持つ住民が主に日中しか通行できなかったが、誰でも24時間通れるようになった。

解除区間の南側のいわき市。双葉町から避難する新田久枝さん(59)は「本当にうれしい」という。区間の北側にある南相馬市の仮設住宅に母親が暮らす。「もう少し一緒にいたいと思っても時間制限があった。帰りの心配もなくなった」

解除5日後、がれきの間で見つかった品々が浪江町のがれき処理業者の事務所で展示されると知り、国道6号を通って訪れた。「あ、これ私のだ! この字、間違いないです」。働いていた配管工事などの会社の印鑑を見つけ、思わず声を大きくした。「すごい収穫でした」と笑顔を見せた。

■被災者「人が住んでこそ」

国道6号を使う被災者のなかには、規制が解除されても、複雑な思いの人もいる。

南相馬市で被災し、市内の仮設住宅に暮らす西美智子さん(47)は3週間に1度、国道6号を利用する。南へ約70キロ離れたいわき市にいる次男勇二君(13)を迎えに行き、一緒に週末を過ごすためだ。

勇二君は重い知的障害がある。施設への入所が必要で、西さんにも仕事があるため離れて暮らす。原発事故後は国道6号の通行が規制され、内陸部を片道3時間以上かけて移動した。昨夏から通行証で通れるようになり、今は通行証なしで約2時間で行き来できるようになった。

送り迎えする間に目に入るのは、公園やショッピングセンター。原発事故で全町避難が続く富岡町にある施設は、事故前に勇二君と一緒に遊びに行った。6号沿いにある福島第二原発の「エネルギー館」はボールプールがあり、何度も通った。

「自由に通れるようになり、前に進んでいると思う。でも、人が住んでこそのまちですよね」

原発事故による避難指示で、福島では今も約8万人がふるさとを追われている。解除区間沿いにある双葉、大熊両町では、人口約1万7千人の大半の自宅が帰還困難区域にあり、国や町の調査に「戻らない」と答える人も多い。

解除区間の近くの沿道でも、かつての街並みは戻ってこない。

解除区間の南にある楢葉町。国道6号沿いでそば・うどん店を営む横田峰男さん(49)は規制解除後、交通量の増加に伴って利用客が増えると見込み、昼過ぎまでの営業時間を延長するかどうか考えた。だが、楢葉町もいまだに全町避難が続く。店員集めにも不安があり、「今はちょっと保留する」と話す

■往来、解除前の1.5倍に回復

国道6号の通行規制が解除され、人、モノの流れは進む。国土交通省磐城国道事務所によると、解除区間の往来は10月で1日平均約1万台。震災前年の1日約2万台の半分だが、解除直前の8月に比べれば1・5倍まで増えている。南相馬市の道の駅のスタッフは「親類に会いに行く人など、普通の利用者が戻ってきている」。同市の宅配業者は「仙台に荷物を運ぶのに、内陸部の東北道を回るより便利」と話す。

ただ、県内のシンクタンク「とうほう地域総合研究所」は「復興にプラスだが、増えた人の消費の受け皿が不足している。規制解除の経済効果を確認するには、もう少し見守る必要がある」とみる。

事故は増えている。解除区間を含めた双葉郡8町村を管轄する双葉署管内で、10月の物損・人身事故が325件と昨年同期を90件上回った。10月9日には双葉町の国道6号で乗用車がトラックに追突し、運転手が1カ月のけがを負った。署幹部は「沿道の風景に目をとめ、ブレーキを踏むのが遅れる人がいる」という。

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