「日の丸技術」は孤立「セブ島」を救うか…

画像の説明 通信網ズタズタ、フィリピン台風被災地に入る「日本ITテクノロジー」  

大規模災害で通信網が途絶された被災地に派遣され、短時間で通信を復旧させる移動式ユニットが、昨秋の台風の甚大な被害を受けたフィリピン・セブ島に設置されることが16日、分かった。
NTTや富士通などが東日本大震災の政府復興予算をもとに開発した機器で、12月にも、日比両政府、国連の専門機関がこの“日の丸ユニット”を使った被災地支援に乗り出す。NTTなどは実績をテコに国内外の政府機関や自治体などへ活用を働きかけていく。

5千人の通話、即時復旧

同ユニットは無線LANのWi-Fi(ワイファイ)アンテナ▽通信用のサーバー▽空調機器▽電源-で構成。ワゴン車に搭載して被災地に派遣されることから、通称「ICTカー」と呼ばれる。

災害時に、通信回線が切れた行政庁舎や避難所、拠点病院などに行き半径500メートルの範囲にワイファイ・ネットワークをわずか1時間で構築。エリア内では最大5千人が専用アプリを導入したスマホで通話ができるようになる“即戦力”として活躍する。

電源はタンクのガソリンを使った自家発電でまかない、補給無しで約5日間の稼働を実現した。

比、台風30号で甚大被害

今回支援に入るのは昨年11月の台風30号(ハイエン)の被害を受けたフィリピン。日赤などによると、死者・行方不明者は7千人を超え、総被災者数は人口の約16%にあたる約1600万人。「食べ物を求めてさまよう人々はゾンビのようで、悲惨な現場はまるで映画だ」という住民の声を伝える海外メディアもあった。

通信インフラも打撃を被り、比政府は通信の復旧支援を国連などへ要請。協議の末、今年5月、通信に関する国連機関(ITU-D)、日比両政府が合意文書を締結。移動式ユニットを用い、被災地のセブ島・サンレミジオ市(人口約6万5千人)への支援を決めた。

衛星携帯電話1台だけ…

同市を視察したNTT未来ねっと研究所の坂野寿和・主幹研究員によると、通信が完全に途絶した被災直後の同市では、「中央政府など外部と連絡を取ろうにも通信手段は市長の衛星携帯電話1台のみという状況だった」。

それから1年たった今なお通信インフラの復旧は不完全で、通話しづらい状況が続く。市庁舎ではインターネット接続はおろか内線電話さえも通じず、職員間の連絡が滞り業務に支障を来しているのが実情だ。予算に限界があり、復旧が後回しになっているらしい。

国際社会で輝く日本の技術

12月中旬に始まる国連主導の支援では、「ICTカー」のうちワゴン車を除くユニット部分を同市に提供、市庁舎周辺に設置する。ワイファイ・ネットワークを展開し、行政、警察、消防の職員ら数百人規模でスムーズに音声通話ができる環境を実現する。

今回の支援は、国連の専門機関が費用を負担し、同ユニットを用いた「実証実験」として行われる。NTTなどにとって被災地での貢献が軌道に乗れば、同ユニットの信頼性を広くアピールできる機会にもなる。「大震災の経験と研究成果を国内外へ還元していく」(同研究所)と意気込んでいる。

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