次の標的はスポーツ界「特にサッカー」

画像の説明 中国「反腐敗」粛清 

中国の習近平指導部は、10月に開いた共産党の重要会議、第18期中央委員会第4回総会(4中総会)で、「法治の全面的な推進」を宣言した。「法治」の名のもと、反腐敗キャンペーンがさらに徹底されることが予想されていた。連日、腐敗官僚らの失脚が伝えられているが、中国のスポーツ界にも、粛清の網が広がる可能性が出てきた。

サッカー「試合の風紀破壊」

11月初め、政府組織などの腐敗を調べる共産党中央規律検査委員会監察部のウェブサイトに、「中国紀検監察報」の評論が転載された。評論は、中国サッカー界の管理の乱れを指摘。低迷が続き、サッカーファンが不満を募らせている中国サッカーへの風当たりが強まっていると主張した。

中国サッカー界の問題は、党中央規律検査委員会の特別チーム「中央巡視組」が、今年7月28日から9月3日に行った調査によって明らかになった。

昨年5月に第1回が実施された中央巡視組の調査は、今回で4回目。中国国営新華社通信のウェブサイト「新華網」によると、今回は、広西、上海、青海、チベット、浙江、河北、陝西、黒竜江、四川、江蘇の各省・直轄市・自治区が調査されたほか、国家体育総局、中国科学院、自動車メーカーの一汽集団でも「専門巡視」が行われたという。

国家体育総局の中で、特に問題視されたのがサッカーだった。中央巡視組は「試合は公平の原則に違反し、いんちきをして人をだましている。試合の風紀を破壊する現象は深刻だ。幹部の兼職が普通になっており、利益関係が複雑になっている」と指摘した。

成果上がらぬ職業化改革

評論はさらに、「サッカーへの関心は最も高く、国家指導者はもとより、一般民衆もみな大きな熱情を注いでいる。しかし、サッカーの職業化改革から20年以上経過したが、中国サッカーは成績が上がらないだけでなく、不正の習慣と腐敗の温床を作り出している」と厳しく批判した。

中国では2012年2月、プロサッカーの八百長事件で収賄罪に問われた中国サッカー協会審判員委員会の張建強元主任に懲役12年の判決が言い渡された。その約4カ月後には、中国サッカー協会の南勇・元副会長に懲役10年6カ月と罰金20万元(約370万円)の1審判決が言い渡された。一連の事件に関与した複数の元中国代表選手にも、5年半~6年の懲役と50万元(約940万円)の罰金が科されるなど、一大スキャンダルに発展した。

それから2年-。浄化を誓った中国サッカー界の体質は、未だに変わっていないことが明らかになった。評論は「中国サッカーの数多の問題は管理部門だけが引き起こしているのではないが、職業化改革が不十分で徹底されていない。特に管理部門の責任放棄、職権乱用が、深い淵に進む主要原因を招いている」と断じた。

評論は「中国サッカーは必ず、法治の思考と法治の方式を運用し、改革を推進しなければならない。当面、急務なのは責任放棄、職権乱用の問題の解決だ」と訴え、法律と財産権を尊重するよう要求している。

低迷に業を煮やす習氏

中国紙、中国青年報などによると、今回の中央巡視組の調査では、井村雅代コーチの手腕で躍進し、現在は藤木麻祐子(まゆこ)コーチが指導に当たるなど、日本とも縁が深い中国国家水泳センター・シンクロナイズドスイミング部の兪麗前部長にも、判定の捜査や収賄などの不正疑惑が持ち上がっているが、中国紙、京華時報などは「サッカーはスポーツ系統の中で、巡視の被害が甚大な罹災地区だ」と表現している。

サッカー界の浄化は、4中総会で習近平指導部が示した「法治の推進」に沿った方針とみられる。今回の巡視では「イエローカード(警告)」でとどまっているが、今後、「レッドカード」が乱発され、幹部の粛清が始まらないとも限らない。サッカー界に対する厳しい意見は、サッカーファンとして知られる習近平国家主席が、中国サッカー界の低迷に業を煮やしていることをうかがわせる。

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