首相を激怒させた宋大使の放言とは…

画像の説明 官房-外務省に不協和音も

拉致被害者らを再調査する北朝鮮の特別調査委員会が7月上旬に設置されてから4カ月が経過した。この間、北朝鮮は「夏の終わりから秋の初め」で合意していた初回報告を先送り。さらにマスコミを通じた水面下のプロパガンダ(宣伝)工作で拉致被害者の帰国が難しいことを指摘したり安倍晋三首相の学歴を揶揄(やゆ)したりと、やりたい放題だ。政府内も秘密交渉に徹する外務省の独走で不協和音が生じつつあり、一丸となって北朝鮮に挑む体勢作りが急務となっている。

「全てを疑う」から始まる協議

外務省は10月末の政府代表団の平壌派遣にあたり、綿密な事前打ち合わせを実施した。政府関係者によると、調査委員長の徐大河(ソ・デハ)国家安全保衛部副部長を名乗った偽者が出てきた際の対応も協議された。政府は事前に徐氏の顔など個人情報を把握していたが、北朝鮮が日本政府の力量を試すことを危惧したのだ。

「日本人全ての問題を解決したい」

腹の底から出る徐氏の野太い声が部屋に響き渡った。本物だった。不安は杞憂(きゆう)に終わったが「全てを疑う」(日朝関係者)ことから平壌派遣の事前準備が始まったという。

日本政府は、初回報告時期の約束を破った交渉相手、宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使に散々手を焼いてきた。

宋氏は9月上旬、金丸信元自民党副総裁の長男、康信氏と会談し、共同通信の取材にも応じて交渉に対する真摯(しんし)な姿勢を猛アピール。同月末の日朝協議に臨んだ中国・瀋陽では日本人記者を集め意見交換会まで開催し宣伝工作を大展開した。

日朝関係者によると、宋氏は意見交換会の席上、政府認定拉致被害者について解決済みとの認識を示し、安倍首相の出身大学を挙げたうえで学歴をからかった。瀋陽の日朝協議でも1時間近く日本の対応を批判。日本は「交渉というよりは演説だ」(同)と閉口したほどだ。

こうした言動に官邸サイドは怒りを爆発させた。政府は宋氏との交渉について「意味がない」(高官)として打ち切る構えだ。

また、韓国紙・東亜日報が11月7日、拉致被害者の横田めぐみさんが1994年に薬物過剰投与で死亡したと報じた。安倍首相は「信憑(しんぴょう)性はない」と否定したが、北朝鮮や拉致問題解決に反対する勢力が日本政府に不満を募らせ、今後も死亡情報を流布する可能性がある。

韓国政府は北朝鮮の核、ミサイル問題対応を優先する姿勢で、日本の拉致事件解決に向けた協力には及び腰だ。政府関係者は「拉致情報収集には韓国の協力が必要だが、思うように進んでいない。韓国政府によるプロパガンダ工作にも警戒する必要が出てきた」と明かす。

外務省の秘密会談につのる不信感

一方、日本政府内では外務省が主導権を握ってきた交渉スタイルに異論が出ている。同省では今夏以降、伊原純一外務省アジア大洋州局長ら交渉担当者が少なくとも4回、海外渡航した。いずれも秘密裏に北朝鮮の国家安全保衛部員と会談を重ねてきた。しかも、マスコミに悟られないよう交渉担当者らが別々の空港から出発する念の入れようだった。政府内で会談の開催自体を明らかにしなかったケースもあり、関係者を困惑させた。

また、伊原氏が瀋陽での日朝協議で北朝鮮に残された日本人の遺骨問題を巡り「墓参は国の事業で行うことを検討している」と発言したことも波紋を広げた。事業を担うことになる厚生労働省内で意思統一ができていなかったからだ。

平壌での日朝協議では拉致問題に関する質問案の作成は、意外にも外務省ではなく内閣官房拉致問題対策本部が担当した。水面下では警察庁がバックに控える同本部と外務省との主導権争いが激化しているようだ。

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