GTアドバンスト倒産で

画像の説明  アップルとサプライヤーの関係が表沙汰に

アップルのサプライヤーとの関係は守秘義務契約があるので表に出ることはまずないのですが、倒産すれば話は別です。

アップルのサファイアガラス供給元「GTアドバンスト」が破産し、工場閉鎖と従業員大量解雇を決めたのに伴い、GT経営陣の宣誓供述書が今月公開され、いろいろとあり得ない契約関係だったことがわかってきました。

本来であればアップルとの契約内容を口外すると、GTは1回5000万ドル(58億円弱)の罰金をアップルに支払わなけばなりません。が、今回は破産手続きの一環で裁判所が特別に公開することを認めました。アップルはあまりにも長々と恨み節が並んでいるため公開を止めようとしましたが、それは認められませんでした。

ニューハンプシャーの無名の会社、GTアドバンストがアップルとサファイアガラスを独占的に開発・供給することで5億7800万ドル(668億円)の契約を結んだのは2013年のことです。その支払いの最終分1億3900万ドル(161億円)の10月末の入金を前にGTはむしろ連邦倒産法第11章適用の道を選びました。もうとっとと終わりにしたい、と倒産のシェルターに逃げ込んだのです。

アップルとの提携を発表した時には「ものすごく楽しみだ」(GT社長Tom Gutierrez氏)とあんなに舞い上がっていたのに、今は「飴とムチ」に踊らされて「厄介な一方的過ぎるディールを掴まされてしまった」とGT社COOのDavid Squiller氏は供述書で悔しさを滲ませています。

GTが「飴」と言ってるのはアップルが最初に持ち込んだ契約です。GTはもともとサファイア結晶炉販売会社なのですが、アップルから炉を2,600台買いたいという申し出があったのです。これは創業以来最大のオーダーです。

しかし価格と契約内容を何ヶ月も交渉するうち、アップルには炉を買う気はないことが明らかに。GTに製造を任せて出来上がったマテリアルを買いたいだけだったんですね。となるとGT(製造機器メーカーであってマテリアルのサプライヤーではない)には巨大な設備投資が必要になります。そこでGTは5億7800万ドル(668億円)をアップルから前借りしてアリゾナ州に新工場を建造し、サファイアの結晶をつくり始めました。

Squiller氏曰く、GTが契約分のサファイアを納期までに製造できなかったのは、そもそもアップルが選定した製造機械がトロくてとても納期に間に合わなかったのだとか。
アップルは製造プロセスのことにしょっちゅう口出しし、マテリアルのスペックを絶え間なく変え続けてきたのだとも。
GTもサファイアは製造したんですが、アップルの需要に追いつく数ではありませんでした。さらにアップルの買取価格は市場価格を割り込んでいました。ですが、アップルに独占的に供給する契約だったため、「もう要らない」と言われても他社に売ることもできず在庫を抱え込んでしまったのです。

結局問題の本質はこのSquiller氏の言葉に集約されます。
GTAT(GTアドバンスト・テクノロジーズ)にはサファイアのマテリアルを何百万個も供給する責任があった。だがアップルにはそのサファイアを買わなければならない義理はひとつもなかったのである。

まあ、そんなホラーな契約書にサインした方もした方だよって思ってしまいますけどね。契約上起こりうる最悪のシナリオになってしまってもそれは契約の範疇のことであって、アップルが嫌がるGTの指をもってきて無理やり血判押させたんでもないし、アップルが目に見えないインクで契約書印刷したんでもないし、お互い様としか言いようがないです。

GTの社長とCOOはiPhone 6発表前や倒産前に持ち株の売り逃げに走ってSECの調査が入ってます。こうなることはある程度わかっていたんじゃないでしょうか。少なくとも途中で気づいていたことは確かです。

GTはリスキーな賭けに乗り、そして負けた。アップルは情け容赦なく契約を実行した。所詮は営利で動く多国籍企業ってことですね。

アップルとGTにはコメントお願いしておきましたので何かあればアップデートします。いずれにしてもアップルのサプライヤーには良い警告かな。iPhoneメーカーとの契約は当たれば天国だけど、リスクフリーではないのです。

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