「消費税増税分はすべて社会保障費に」は嘘だった

画像の説明 財務相が、消費税率引き上げの環境整備だけでなく、足元の景気情勢をにらんだ対策の必要性に言及したのは初めて。

麻生太郎財務相は閣議後の会見で、「経済対策の必要性について、7-9月期国内総生産(GDP)など様々な経済指標をみて考えていく」としたうえで、対策は「目先的なものと消費税率再引き上げ後に向けたものと、2つ分けて考える必要がある」と述べた。

公明党の石井啓一政調会長も20日のロイターのインタビューで、消費税率引き上げの判断と切り離して、円安による弊害の対策を講じる必要があると述べており、政府・与党内で消費税再増税の判断と切り離した経済対策の必要性に言及する発言が広がってきた。

また、再増税の理解を得るには、引き続き増税分の一部を社会保障の充実分に充て、国民に還元されることを説明し理解を求めていくとした。一方で、「国民に負担を求める以上、(政府も)無駄、非効率的なものは最大限排除しなければならない。社会保障の支出を含めて、聖域を設けず見直していく」と語った。

来年度予算編成に向けて議論が始まった財政制度審議会では、年金・医療・介護などの社会保障分野で受給者に幅広く負担増を求めている。麻生財務相は、高齢化で社会保障関係費が増大するなか、受益と負担の均衡を考え、徹底した合理化をしないとやっていけないことははっきりしているとし、「15年度予算編成過程でも、財政制度審議会の議論を十分踏まえ、厚労相と相談していく」と述べた。

で、何が興味深いかというと、まずは「消費税率再引き上げ後に向けた経済対策」と述べている点である。消費税10%への増税はこれから判断することになっているはずであり、巷間、増税延期論や増税見直し論が盛んだが、安倍政権内では、消費税増税はすでに決定済みと読める。

もっとも、「何を今さら」と言われる方が多いかもしれない。デフレ不況下で消費税を8%に増税するという愚を実行した以上、この上どんな愚行も迷わず実行することは想像に難くない。

しかし、注目すべきは、その消費税増税分の使い途である。国民が、デフレ不況下で敢えて消費税を増税するという愚行に反対しなかったのは、「消費税増税分は、すべて社会保障費に充てる」という首相の言葉を信じたからだろう。

無論、そんな公約は嘘だということは明らかで、このブログでも再三主張してきた。しかし、日本国民は首相が公約を守ると信じているようで、社会保障費に充てるなら増税もやむを得ないと無理に納得してきたのである。

ところが、上記の記事を読めば分かるように、麻生財務相は、「再増税の理解を得るには、引き続き増税分の一部を社会保障の充実分に充て、国民に還元されることを説明し理解を求めていく」と明言しているのである。

社会保障の充実に充てるのは、「増税分の一部」に過ぎないのである。すべて充てるわけではないのみならず、大半を充てるわけでもない。「一部」しか充てないのである。では、一部とはどのくらいの割合なのかというと、それは分からない。

10%かもしれないが、5%かもしれない。ことによると1%かもしれないのである。それでも政府は「消費税増税分は社会保障の充実に充てた」と強弁するだろう。消費税増税の正体はそれであり、軽口で有名な麻生財務相は、メディアに向かって、あっさりと真実を漏らしてしまったのである。

消費税はすでに8%に上がっているが、それで税収が増えたかといえば、むしろ減収になっているだろう。

消費税増税は家計を直撃しているから、当然消費は落ち込んでいるはずであり、税収が増えるわけがない。にもかかわらず、税収が増えないのは増税が足りないからだといって、更に増税を続ければ、税収は更に落ち込むだろう。

橋本政権時代のように、中小企業の倒産と自殺者が急増し、国民は塗炭の苦労を強いられることになる。アベノミクスの失敗は陽を見るより明らかになるだろう。現状のまま放置すれば日本国民に明日はない。日本国民は、羊のように従順でいられる時代ではなくなったことを理解すべきである。

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