「エボラ」よりも怖い「オバマ」のとんだ疫病神ぶり

画像の説明 米南部テキサス州ダラスの病院で起きたエボラ出血熱の二次感染は、米国人の不安をかき立てている。

野党共和党はエボラ出血熱、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の「2つの恐怖」をめぐる政権の不手際の追及を選挙戦の柱に据えている。もっとも、接戦区の民主党候補が「エボラ」よりも怖いのは「オバマ」かもしれない。

簡単な質問に立ち往生

「オバマ政権によるエボラ出血熱の危機対応は適切だと思いますか?」。記者からの問いかけに、南部アーカンソー州選出のマーク・プライヤー上院議員(51)は口ごもった。

「うーん…。難しいですねえ。最新のブリーフィングを受けていないし…」

プライヤー氏は3期目を目指す現職であり、オバマ政権を支える立場だ。政権の対応について聞かれた時の模範解答は「イエス」だが、そう答えられないところに民主党候補の悩みが表れている。

アーカンソー州でプライヤー氏の議席を狙うトム・コットン下院議員(37)は、接戦を制するためバラク・オバマ米大統領(53)とプライヤー氏の「近さ」を攻撃材料に使っている。医療保険制度改革(オバマケア)など上院での議決でオバマ氏寄りの投票が95%だったことなどを取り上げ、プライヤー氏に「オバマ銘柄」のレッテルを貼ろうとしているのだ。

「イエス」か「ノー」かで答えられるような質問に即座に答えられなかったのは、オバマ氏の不人気と結びつけられるのを懸念したからだろう。プライヤー氏に質問した記者は「オバマ氏の名前が、アーカンソー州では有毒物になっている」とコメントした。

「防護服」をまとう

オバマ氏への支持は回復の兆しを見せていない。ワシントン・ポスト(WP)紙とABCテレビの合同世論調査によると、オバマ氏の支持率は2009年の就任以来で最低の40%となった。上院での過半数維持に黄信号がともり、民主党は危機感を強めている。

上院選に出馬している民主党のある女性候補は最近、オバマ氏が積極的な銃規制や環境政策で「違い」を強調するCMを作って話題を呼んでいる。キャッチフレーズは「私はバラク・オバマではありません」。米メディアは、このように民主党候補がオバマ氏を遠ざける行動を「ハズマット・スーツをまとっている」と論じる。ハズマット・スーツとはエボラ出血熱の患者を手当てする医療従事者が着用する防護服のことだ。

民主、共和両党の全国組織は重点区に巨額の選挙資金を投入し、地元局でCMを流している。戦略はくっきりと分かれている。民主党は雇用、教育など地域の課題に消極的だとして対抗馬を攻撃しているのに対し、共和党はイスラム国やエボラ出血熱など国政課題への対応でオバマ氏の過去の発言を取り上げることで相手を批判している。

両党の議論はかみ合わず、「州の利益を第一に考え、党の垣根を越えます」と訴えることが民主党候補にとってトレンドになっている。

実績を残す秘策

オバマ氏は国内でエボラ出血熱の感染者が出たのを受け、連日のように「御前会議」を開いている。対策を統括する「即応調整官」も任命。イスラム国対応でもみられなかった行動は、強い危機感の表れといえる。米国人の3分の2が感染拡大への危機感を抱いているとされるだけに、感染の危機に立ち向かう大統領の姿を見せる狙いもあるのだろう。

共和党が「2つの恐怖」を政争の具に使うのは上品とはいえないが、政治家の「生き死に」がかかった選挙では利用できるものは何でも利用するものだ。自民党を否定して政権を取った日本の民主党を例に引くまでもないが、批判した側にはおのれの言説に対する責任がブーメランとして跳ね返ってくる。ただそれだけの話だ。

WP紙が1973年以来の連邦議会での法案成立数の平均を調べたところ、現在のように上下両院で与野党の「ねじれ」が生じている場合が約450件で最も少なかった。興味深いのは、最も成立していたのは、野党が上下両院とも過半数を持つ「分割政府」の場合の約600件で、与党が上下両院を握った場合の約560件を上回ったことだ。野党が立法府を完全掌握することで、与野党の妥協が成立する可能性が高まるのだという。

オバマ氏の大統領任期は残り2年余り。ノーベル平和賞受賞者にふさわしい実績を残すには、おとなしく上院を共和党に譲った方がいいのかもしれない。

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