経済危機に目を向けない韓国の政界

画像の説明数ある職業の中で最も直感が発達するのは企業家に違いない。

自分が決定したことに対し、数カ月後に市場の審判を受けねばならないためだ。一度の決断ミスが本人だけでなく会社全体を危機に追い込むこともある。こうした点で、国という揺るぎないバックを持つ公務員や、選挙のときだけ有権者に気を配る政治家たちは、企業家の感覚についていくことができない。

年末が近づく中、記者が会った韓国財界の要人たちは一様に浮かない顔つきだった。来年の経営計画にはおのずと「景気が再び持ち直すよう期待する」という文句が入る。大企業グループのある幹部は「2010年から11年にかけてのような『中国ブーム』が再び訪れることは期待できない。これまでに獲得したシェアを奪われず、売上高だけでも増えれば幸いだ」と語った。

財界関係者たちの言葉をまとめると、悲観論の根拠は大きく分けて二つある。一つは、世界市場で業種を問わず韓国企業の競争力がこぞって下落しているという現実だ。鉄鋼、石油化学、造船など「株式会社・韓国」を支えてきた重厚長大型産業が危機に直面しているだけでなく、電子、自動車などこれまで好調だった産業も、程度の差はあれ業績が下り坂をたどっている。

外資系メーカーのある幹部は「来年の経営計画を立てているが、今年よりも(業績が)悪化することはほぼ確実だ」と語った。

韓国で工場を稼働しているこのメーカーは、サムスンやLG、現代自動車などの大企業に主に納品している。これら韓国大企業の業績が振るわないため、自社の売り上げが伸びる見込みはほぼゼロだというわけだ。韓国銀行や政府系シンクタンクは来年の経済成長率が今年の見通し(3.5%)を上回ると見込むが、財界の雰囲気はこうした見通しとは全く異なる。

企業家が未来を悲観するもう一つの理由は、こうしたことに悩んでいるのが企業家だけだということだ。一国の産業競争力を高めるには当事者である企業家が奮闘するだけでは不十分で、政界が率先して経済問題に取り組まなければならない。日本は政府が円安を誘導するアベノミクスを打ち出し、「党イコール国家」の中国は産業高度化や新成長エンジンの育成など骨太の経済政策を政治家が主導している。これらの国の変化は企業ではなく政界から出発している。

ある企業の最高経営責任者(CEO)は「与野党のいずれも、企業が置かれている現状を案じている様子がない」と言ってため息をついた。「国政監査の場に企業家を呼んで恥をかかせることにばかり躍起になり、企業家をまるで犯罪予備軍のように見るのは、今も昔も同じだ」と話す。近ごろ政界で広がっている改憲をめぐる論争でも、経済という変数は全く無視されている。

世界市場で中国企業に追撃され、円安を追い風にした日本企業に押されている現実は、企業家たちの会合でもため息交じりに語られている。財界人たちは現状を悲観的に見る傾向があると言う人もいるかもしれない。だが今、彼らが大げさだと言うには現状はあまりに深刻に見える。

コメント


認証コード5211

コメントは管理者の承認後に表示されます。